【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

DPP-4阻害薬とPAD・下肢切断/HPVワクチンに対する報道

今回も抄録しか読めないけど気になった論文を。

 

①「Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors, peripheral arterial disease and lower extremity amputation risk in diabetic patients.」

PMID:27884648

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27884648

 

【PECO】

: 2型糖尿病患者(台湾、82169人、平均年齢58.9±12.0歳、男性54%)

: DPP-4阻害薬の使用あり

: なし

: 末梢動脈疾患、下肢切断

 

【チェック項目】

・研究デザイン : 人口ベースのコホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 全民健康保険のデータベースが使用されており、大きなっ問題はないと思われる

・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている

・追跡期間 : 平均3.0年間

 

【結果】

・末梢動脈疾患→ハザード比0.84(95%信頼区間0.80~0.88)

・下肢切断→ハザード比0.65(95%信頼区間0.54~0.79)

 

【感想】

2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬の使用が末梢動脈疾患および下肢切断のリスクを低下させることが示唆されている貴重な報告です。

マッチングがどのように行われたのかは抄録に記載されてはいませんが1:1でマッチングされているとすれば末梢動脈疾患に対するNNTは3年間でおよそ84人。

もちろんあくまでも観察研究であり、DPP-4阻害薬を積極的に使用すべきであると結論することはできませんがメトホルミンの次の手としてのDPP-4阻害薬という選択も考慮できるように思います。

 

それにしても台湾のDPP-4阻害薬に関する観察研究は結果が出来すぎている点がちょっと気になるところですねえ。

 

関連記事

 

 

②「Trends of media coverage on human papillomavirus vaccination in Japanese newspapers.」

PMID:27660235

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27660235

 

【要約】

2013年3月、日本でヒトパピローマウィルスワクチンによる有害反応の可能性に関する新聞記事が発表された。

2013年6月、日本政府は証拠が不十分であるにも関わらず積極的な推奨を中止した。

日本における最大の新聞データベースである日経テレコン21で2011年1月から2015年12月までに出版されたヒトパピローマウィルスワクチンに関する新聞記事を検索しその特徴を評価したところ、関連する記事が1138記事確認された。

2013年3月以前の記事と比較すると2013年3月以降の記事では有害反応や権力に関連するキーワードが含まれる傾向が強く、それに反して有効性に関連するキーワードは著しく減少していた。

ネガティブーネガティブおよびネガティブーニュートラルな記事はより多くなり、ポジティブーポジティブおよびポジティブーニュートラルな記事は多くはなかった。

センセーショナルな症例報告は、保健当局からの科学的な声明とは関係なく、否定的なメディア報道を促進させることとなった。

 

【感想】

よくある光景と言ってしまえばそれまでですが、リスク・ベネフィットについて定量的に考えるという事は非常に重要な事であるように思いますが、ベネフィットについては考慮せずリスクのみを見て騒いでいる良い例かと思います。

メディアの力はやはり強く、それを覆すのはなかなか難しい場面も多いのですが国民の医療リテラシー向上に寄与するための取り組みも今後考えていきたいところです。