【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

厳格な血糖コントロールで死亡リスクは増加しますか?

「Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials.」

PMID: 21791495
 

PECO

P : 18歳以上の2型糖尿病患者(34533人、男性60%・平均年齢62歳・ベースライン時のHbA1c7.9%・平均BMI31kg/㎡・糖尿病の平均罹患期間7.8年)
E : 厳格な血糖降下治療
C : 標準的な治療
O : 総死亡・心血管死亡
 

チェック項目

・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス :「Two investigators independently reviewed」と記載されている
・出版バイアス : 言語の制限は設けられていないが、「As in other meta-analyses, publication bias may occur」と記載されている
・元論文バイアス : 全てRCT、11試験中high qualityとされているのは4試験
・異質性バイアス : ブロボグラムの方向性は視覚的に一致していない
・平均追跡期間 : 5.0年間
 

結果

・総死亡→リスク比1.04(95%信頼区間0.91~1.19)
異質性:P=0.09,I2=42%
・心血管死亡→リスク比1.11(95%信頼区間0.86~1.43)
異質性:P=0.006,I2=61%
 
※二次アウトカム
・全ての心筋梗塞→リスク比0.90(95%信頼区間0.81~1.01)
異質性:P=0.60,I2=0%
・非致死的な心筋梗塞→リスク比0.85(95%信頼区間0.74~0.96)
異質性:P=0.87,I2=0% NNT=334
・全ての脳卒中→リスク比0.96(95%信頼区間0.83~1.13)
異質性:P=0.62,I2=0%
・非致死的な脳卒中→リスク比1.00(95%信頼区間0.83~1.21)
異質性:P=0.71,I2=0%
・うっ血性心不全→リスク比1.17(95%信頼区間0.91~1.50)
異質性:P=0.01,I2=59%
・重症低血糖→リスク比2.33(95%信頼区間1.62~3.36)
異質性:P=0.03,I2=63% NNH=35
 

感想

「厳格な」と言ってもランダム化比較試験間で目標とするHbA1cが<6~7%と差があるように思いますが、ひとまず厳格な血糖コントロールによる死亡リスクの増加は見られておりません。
 
出版バイアスや異質性バイアスなど妥当性には疑問がありますが、少なくとも死亡リスクについては有意な差は見られずやはり重症低血糖のリスクは増加する事が示唆されている点から厳格な血糖コントロールが推奨されるものではないと考えます。
 
他にも厳格な血糖コントロールについて検討されているメタ解析をいくつか見つけました。あまり見解が変わるものではないとは思いますがそちらはまた後程。