【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

薬剤師が介入することでCOPD患者のQOLは改善しますか?

「Effectiveness of clinical pharmacist intervention on health-related quality of life in chronic obstructive pulmonary disorder patients - a randomized controlled study.」

PMID: 26775599
 

PECO

P : COPD患者260人(インド)
E : 症状管理や吸入器の使い方及びその重要性について訓練を受けた薬剤師の介入により、吸入の仕方等が記述されているリーフレットが配布され、服薬コンプライアンスの重要性・禁煙の必要性・簡単な運動・適切な吸入デバイスの使用・呼吸器内科による適時のフォローアップの必要性について15~20分のカウンセリングを受け、6ヶ月ごとに吸入デバイスの適切な使用及び服薬アドヒアランスの維持について指導される(130人、平均年齢60.6±7.9歳、男性96.9%)
C : 通常ケア(130人、平均年齢61.1±8.4歳、男性94.4%)
O : SGRQスコアにより評価された健康関連QOL
 
※SGRQ→症状(症状の頻度や程度)・活動(日常生活の活動レベル)・衝撃(社会活動や心理的な障害)の3つに分けてスコアが計算され、各スコアは0~100の範囲で数値が大きいほど障害が大きい。臨床的に意義のある変化は4単位とされている。
 

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : 封筒法によりランダム化が行われている
・盲検化が行われているか? : 行われていない
・ITT解析が行われているか? : 行われていない
・追跡率 : 77.7%
・サンプルサイズ : 260人(パワー80%)
・患者背景 : 問題になるような偏りは見られない
 

結果

[6ヶ月後]
・症状 : E群(66.83単位) vs C群(73.81単位)→単位差-6.98(95%信頼区間-8.46~-5.32)P=0.001
・活動 : E群(71.20単位) vs C群(76.23単位)→単位差-5.03(95%信頼区間-7.53~-3.40)P=0.001
・衝撃 : E群(55.43単位) vs C群(62.31単位)→単位差-6.88(95%信頼区間-8.21~-5.11)P=0.001
・トータル : E群(61.70単位) vs C群(68.30単位)→単位差-6.67(95%信頼区間-7.36~-5.97)P=0.001
 
[24ヶ月後]
・症状 : E群(65.74単位) vs C群(71.96単位)→単位差-6.22(95%信頼区間-7.36~-5.81)P=0.001
・活動 : E群(73.63単位) vs C群(77.89単位)→単位差-4.23(95%信頼区間-6.13~-.402)P=0.001
・衝撃 : E群(53.87単位) vs C群(62.03単位)→単位差-8.16(96%信頼区間-9.13~-7.14)P=0.001
・トータル : E群(60.40単位) vs C群(68.50単位)→単位差-8.14(95%信頼区間-8.85~-7.43)P=0.001
 

感想

薬剤師による入念な介入により臨床的にも意義のある健康関連QOLの改善が示されていますが、残念ながら脱落者が多く、ITT解析が行われておらず、PROBEも行われていないため内的妥当性は低いと思われ、結果はある程度割り引いて考える必要がありそうです。
国民性等も関係してくるのかもしれませんが、アドヒアランスの必要性について指導されているにも関わらずそれなりに脱落者がいる点は薬剤師的にちょっとガッカリしてしまいますね。
 
とは言え、患者が正しい手技により確実に吸入出来るかどうかは薬剤師による指導が大きな役割を担っており(場合によっては患者に合わせたデバイスの提案も必要かと思います)、近年の吸入薬の種類の多さには若干戸惑ってしまいますが各種デバイスに対していかに指導すればわかりやすくかつ正しく吸入してもらえるのか定期的に薬局内で練習してみたり工夫していく必要があるかなと思います。
また十分に理解しているつもりのデバイスでも、COPDではありませんがイナビルを鼻から吸った疑いのある例が数例あり(Twitter調べでは4人の薬剤師が経験)、思いもかけないようなピットフォールが存在することもあるため改めて情報を収集しながらピットフォールに対する理解・対策も行っていく必要があるなと感じております。
 
また、定期的に又は症状の悪化が見られた時等は改めて正しく吸入出来ているのかを確認する事も重要ですね。
 
 
 
私は新規で吸入薬が処方された場合は指導を行った後、メーカーが作成した説明書のみ渡しておりますが、吸入の手技だけでなくこの試験のカウンセリングで行われたような内容のリーフレットを自作して渡してみても良いのかなと思いました。