【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

お酒を飲むと癌になりやすいですか?②

今回も前回から引き続きアルコール摂取についての論文を。
 
前回の記事はこちら

 

 

 
 

「Alcohol consumption and cardiovascular disease, cancer, injury, admission to hospital, and mortality: a prospective cohort study.」

PMID: 26386538
 

PECO

P : 12ヶ国における心疾患・脳卒中・癌の既往のない35~70歳の114970人
E : 飲酒あり
C : 飲酒なし
O : 死亡・心血管疾患・アルコールに関連した癌・ケガ・入院
 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・交絡因子の調整は? : 年齢・性別・喫煙・人種・教育・BMI・糖尿病・高血圧・黄疸又は肝炎・身体活動・食事・服用薬・財産について調整されている。
・集団の代表性は? : イベント発生率を歪めないよう十分にサンプリングされていると記載されており、大きな問題はないと思われる。
・追跡期間中央値 : 4.3年
 

結果

[死亡]
・以前飲酒していた(ここ1年以上は飲酒していない)→調整ハザード比1.56(95%信頼区間1.27~1.92)
・現在飲酒している→調整ハザード比1.00(95%信頼区間0.87~1.14)
 
[心血管疾患]
・以前飲酒していた→調整ハザード比1.19(95%信頼区間0.94~1.50)
・現在飲酒している→調整ハザード比0.97(95%信頼区間0.87~1.09)
 
[心筋梗塞]
・以前飲酒していた→調整ハザード比0.89(95%信頼区間0.60~1.33)
・現在飲酒している→調整ハザード比0.76(95%信頼区間0.63~0.93)
 
[脳卒中]
・以前飲酒していた→調整ハザード比1.31(95%信頼区間0.92~1.86)
・現在飲酒している→調整ハザード比1.01(95%信頼区間0.82~1.24)
 
[癌]
・以前飲酒していた→調整ハザード比1.93(95%信頼区間1.32~2.80)
・現在飲酒している→調整ハザード比1.51(95%信頼区間1.22~1.89)
 
[ケガ]
・以前飲酒していた→調整ハザード比1.63(95%信頼区間1.10~2.42)
・現在飲酒している→調整ハザード比1.29(95%信頼区間1.04~1.61)
 
[入院]
・以前飲酒していた→調整ハザード比1.06(95%信頼区間0.92~1.22)
・現在飲酒している→調整ハザード比0.86(95%信頼区間0.78~0.94)
 

感想

以前飲酒していた群では死亡リスクについて有意な差は見られず、現在飲酒している群では死亡リスクの増加が示唆されているのが不思議な感じがしますが、何かしらお酒が飲めなくなった状況がリスクを増加させているのかもしれません。ちなみに現在飲酒している群でも多量の摂取(more than 14 drinks per week for women or more than 21 drinks per week for men)では死亡リスクの増加が示唆されています。

 

こちらのコホート研究でも前回と同じように癌との関連が示唆されています。癌については少量の摂取では有意差があり、多量の摂取では有意な差は見られておらず、なんだか一貫性のない結果になっています(少量摂取72%・中等量摂取17%・多量8%のためβエラー?)。

 

前回の論文と合わせて考えるとアルコールの少量摂取でも癌リスクが高くなる可能性はありますが、まあ「飲まなきゃやってられねー!」なんて状況もあるでしょうし、お酒を飲むならほどほどにってことでしょうかね…