【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

サキサグリプチン vs プラセボ?

これまでシタグリプチン・アログリプチンのプラセボと比較した非劣性試験を読んできましたが、今回は更に時間を遡ってサキサグリプチンの非劣性試験を読んでみたいと思います。

 

過去の記事はこちら

screamtheyellow.hatenablog.com

screamtheyellow.hatenablog.com

 

では今回の論文を

「Saxagliptin and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes mellitus」
PMID: 23992601
 

PECO

P : 心血管疾患の既往又は複数のリスク因子を有する40歳以上でHbA1c6.5%~12%の2型糖尿病患者(16492人)
E : サキサグリプチン5mg/日(eGFR≦50ml/分の場合は2.5mg/日)(8280人)
C : プラセボ(8212人)
O : 心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性虚血性脳卒中の複合エンドポイント
 

チェック項目

・研究デザイン : 非劣性ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 複合エンドポイントのため注意
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : 2重盲検が行われている
・解析方法は? : ITT解析が行われている
・追跡率 : 99.8%
・追跡期間中央値 : 2.1年
・患者背景 : 特に気になるような偏りは見られない。平均年齢65.1歳・女性33.1%・平均体重87.9kg・平均BMI31.2
 

結果

※非劣性マージンは95%信頼区間の上限が1.3
 
サキサグリプチン群(7.3%) vs プラセボ群(7.2%)→ハザード比1.00(95%信頼区間0.89~1.12)、P=0.99
 
また、複合エンドポイントの各要素は
 
・心血管死
サキサグリプチン群(3.2%) vs プラセボ群(2.9%)→ハザード比1.03(95%信頼区間0.87~1.22)、P=0.72
 
・心筋梗塞
サキサグリプチン群(3.2%) vs プラセボ群(3.4%)→ハザード比0.95(95%信頼区間0.80~1.12)、P=0.52
 
・虚血性脳卒中
サキサグリプチン群(1.9%) vs プラセボ群(1.7%)→ハザード比1.11(95%信頼区間0.88~1.39)、P=0.24
 
また急性膵炎はサキサグリプチン群(0.3%)・プラセボ群(0.2%)(P=0.42)
 

感想

サキサグリプチンはプラセボと比較して少なくとも劣っていないということが示されたわけですが、そもそも「The trial was sponsored by AstraZeneca and BristolMyers Squibb」と記載されており何だかキナ臭い感じがしなくもありません。
いずれにしろ、今までの2つの非劣性試験と同様に大血管症の予防や死亡リスクの低下に対して効果があることは示されておらず、以前の記事で書きましたがサブ解析では心不全による入院のリスクが増加する事が示唆されています。

 

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ちなみにこう言った記事を目にしたのですが、

未治療糖尿病患者の6割にDPP-4阻害薬 : 日経メディカルhttp://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201507/542900.html
他に大血管症や死亡リスクを低下させる事が示されている薬がある中で、今のところいまいち効果が不明で比較的薬価の高い薬が第一選択薬として使われているこの状況は何かがおかしいんじゃないかと、そう感じます。
 
ただ、メトホルミンへの追加でSU剤と比較して死亡等のリスクを低下させる事が示唆されている研究もあるため、DPP-4阻害薬をどのように使われていくべきか、調べながら考えていきたいと思います。

 

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