【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

スタチンの効果は男女で違う?

「Efficacy and safety of LDL-lowering therapy among men and women: meta-analysis of individual data from 174 000 participants in 27 randomised trials」

PMID: 25579834
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25579834
 

PECO

P : 27試験に参加した患者174149人(女性27%)
E : スタチンあり、又はスタチン高用量
C : プラセボ、又はスタチン低用量
O : LDLコレステロール値を1.0mmol/L低下させた際の心血管イベント・冠血管イベント・冠動脈再建・脳卒中・癌・死亡の変化
 

チェック項目

・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されている
・評価者バイアス : 記載なし
・出版バイアス : 記載なし
・元論文バイアス : 全てRCT
・異質性バイアス : 異質性検定が行われている
・追跡期間 : 2年以上のRCTが選ばれている
・資金源 : 「The funders had no role in study design, data collection, data analysis, data interpretation, or writing of this Article. 」の記載あり
 

結果

[心血管イベント]
・男性 : E群(3.5%) vs C群(4.4%)→相対リスク0.78(95%信頼区間0.75~0.81)、NNT=112
・女性 : E群(2.6%) vs C群(3.0%)→相対リスク0.84(95%信頼区間0.78~0.91)、NNT=250
・全体 : E群(3.3%) vs C群(4.0%)→相対リスク0.79(95%信頼区間0.77~0.81)、NNT=143
※異質性P=0.33
 
[冠血管イベント]
・男性 : E群(1.6%) vs C群(2.1%)→相対リスク0.74(95%信頼区間0.70~0.78)、NNT=200
・女性 : E群(1.2%) vs C群(1.3%)→相対リスク0.83(95%信頼区間0.74~0.93)、NNT=1000
・全体 : E群(1.5%) vs C群(1.9%)→相対リスク0.76(95%信頼区間0.73~0.79)、NNT=250
※異質性P=0.10
 
[冠動脈再建]
・男性 : E群(1.7%) vs C群(2.3%)→相対リスク0.75(95%信頼区間0.71~0.80)、NNT=200
・女性 : E群(1.0%) vs C群(1.2%)→相対リスク0.76(95%信頼区間0.66~0.87)、NNT=500
・全体 : E群(1.5%) vs C群(2.0%)→相対リスク0.76(95%信頼区間0.73~0.78)、NNT=200
※異質性P=0.15
 
[脳卒中]
・男性 : E群(0.7%) vs C群(0.8%)→相対リスク0.83(95%信頼区間0.76~0.90)、NNT=1000
・女性 : E群(0.7%) vs C群(0.8%)→相対リスク0.90(95%信頼区間0.78~1.04)、NNT=1000
・全体 : E群(0.7%) vs C群(0.8%)→相対リスク0.85(95%信頼区間0.80~0.89)、NNT=1000
※異質性P=0.31
 
[総死亡]
・男性 : E群(2.4%) vs C群(2.6%)→相対リスク0.90(95%信頼区間0.86~0.95)、NNT=500
・女性 : E群(2.0%) vs C群(2.2%)→相対リスク0.91(95%信頼区間0.84~0.99)、NNT=500
・全体 : E群(2.3%) vs C群(2.5%)→相対リスク0.91(95%信頼区間0.88~0.93)、NNT=500
※異質性P=0.43
 
[癌の発生・死亡]
・有意な差は見られない
 

感想

どうやら男女でのスタチンの効果を比較した研究のようで、男女間であまり差がないという結論のようです。
評価者バイアス・出版バイアスについては排除しきれず(記載が見つけられないだけかもしれませんが)、一次アウトカムも複数設定されているため割り引いて考える必要があるかもしれませんが総死亡に関しては1割程度、心血管イベントや冠血管イベントに関しては2~3割程度リスクを減少させるという結果で、最近では糖尿病の発症との関連が示唆されているスタチンですがなかなか優秀なように感じます。
ただ、心血管イベントなどでは男性と比較して女性の方がリスクの低下が低いため、リスクとベネフィットについてはやはり男女では分けて考える必要があるのかもしれません。