【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高齢になってからのプラバスタチンの開始は効果があるのか?~その後

今回は前回のランダム化比較試験後の観察研究を。

 

前回の記事はこちら

 

「Long-term effects of statin treatment in elderly people: extended follow-up of the PROspective Study of Pravastatin in the Elderly at Risk (PROSPER).」
PMID: 24023757
 
ランダム化比較試験期間も含めて追跡期間の平均が8.6年の観察研究です。
前回の試験では5804人がランダムに割り付けられていましたが、最終的には5188人が追跡されています。
 
交絡因子は、年齢・性別・喫煙・血圧・LDLコレステロール・HDLコレステロール・糖尿病・高血圧症・冠動脈疾患・脳血管疾患・末梢血管疾患について調整されています。
 

結果

[死亡に関するアウトカム]
・総死亡
プラバスタチン群(42.5%) vs プラセボ群(42.4%)→ハザード比0.99(95%信頼区間0.91~1.07)P=0.75
 
・非心血管死亡
プラバスタチン群(24.6%) vs プラセボ群(24.2%)→ハザード比1.01(95%信頼区間0.91~1.12)P=0.80
 
・心血管死亡
プラバスタチン群(17.9%) vs プラセボ群(18.2%)→ハザード比0.95(95%信頼区間0.84–~1.08)P=0.43
 
・冠動脈疾患死亡
プラバスタチン群(9.1%) vs プラセボ群(10.9%)→ハザード比0.80(95%信頼区間0.68~0.95)P=0.0091
 
・脳卒中死亡
プラバスタチン群(4.4%) vs プラセボ群(3.4%)→ハザード比1.24(95%信頼区間0.96~1.62)P=0.10
 
[癌に関するアウトカム]
・癌の発生
プラバスタチン群(19.7%) vs プラセボ群(18.4%)→ハザード比1.08(95%信頼区間0.96~1.21)P=0.22
 
・癌死亡
プラバスタチン群(12.2%) vs プラセボ群(11.1%)→ハザード比1.03(95%信頼区間0.93~1.15)P=0.15
 
[冠動脈疾患死亡・非致死性心筋梗塞・致死性又は非致死性の脳卒中による複合エンドポイント]
プラバスタチン群(29.3%) vs プラセボ群(31.0%)→ハザード比0.91(95%信頼区間0.79~1.05)P=0.18
 

感想

ランダム化比較試験期間でみられた複合エンドポイントの有意な減少が延長期間では認められず、冠動脈疾患死亡については有意に減少しているものの総死亡については有意差がみられていない。
高齢者を対象にした研究だけあって4割もの方が亡くなっていますが、その内の冠動脈疾患による死亡の割合が少ないため総死亡には影響を与えづらいということなのでしょうかね?
前回の記事では抜けてしまっていましたが、ランダム化比較試験期間中でも総死亡は[ハザード比0.97(95%信頼区間0.83~1.14)]と有意差がみられていませんでした。
 
いずれにしろ高齢になってからのプラバスタチンの開始は意義があるものなのかますますわからなくなる結果でした。