【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

メトホルミンにもう1剤追加するなら?

「Association Between Intensification of Metformin Treatment With Insulin vs Sulfonylureas and Cardiovascular Events and All-Cause Mortality Among Patients With Diabetes.」

PMID: 24915260
 
 

・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究

 

PECO

P : メトホルミンによる治療を受けている18歳以上の患者(米国、14616人)
E : メトホルミンにインスリンを追加(2436人)
C : メトホルミンにSU剤を追加(12180人)
O : 急性心筋梗塞・脳卒中による入院・全死亡の複合アウトカム
 

チェック項目

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 複合アウトカムのため注意
・交絡因子の調整 : Propensity scoreによるマッチングが行われている
・追跡期間中央値 : 14ヶ月
・患者背景 : 男性95%・白人70%・HbA1c中央値8.1%・年齢中央値60歳
 

結果

E群(42.7/1000人年) vs C群(32.8/1000人年)→ハザード比1.30(95%信頼区間1.07-1.58)
 

感想

メトホルミンを服用している患者ではインスリンを追加するとSU剤を追加した場合と比較して急性心筋梗塞・脳卒中による入院・全死亡のリスクが増加することが示唆されていますが、追跡期間がやや短いのではないかと感じます。また、対象がほぼ男性である点にも注意が必要ではないかと思います。
いずれにしろ観察研究なので、複合アウトカムのリスクが高い人達にインスリンが追加されていた可能性も考えられるためこのまま適用できるものではないですが、少なくとも積極的にインスリンの導入を行う事については疑問が生じるような結果ではないかと思います。
なんだかややこしい言い回しになってしまいましたね。
 
ちなみに、複合アウトカムの各要素では急性心筋梗塞+脳卒中による入院では有意差はみられず、全死亡のみ有意差があり、更に全死亡のうち心血管死・その他の死亡では有意差はみられず、癌による死亡のみ有意差があったという結果になっています。
 
 
 
その他にSU剤とDPP-4阻害薬を比較した試験も2つほど見つけたので、抄録のみしか読めませんがついでに書いておきます。
 

①「The Combination of DPP-4 Inhibitors Versus Sulfonylureas with Metformin After Failure of First-line Treatment in the Risk for Major Cardiovascular Events and Death.」

PMID: 25840943
 
 
・研究デザイン : コホート研究
 
P : メトホルミン又はSU剤の単剤による治療を受けている患者(英国、11807人)
E : メトホルミン+DPP-4阻害薬(2286人)
C : メトホルミン+SU剤(9521人)
O : 心筋梗塞・脳卒中・全死亡の複合アウトカム
 
傾向スコアマッチングが行われており、結果はメトホルミン+DPP-4阻害薬群はメトホルミン+SU剤と比較して調整ハザード比0.62(95%信頼区間0.40-0.98)とリスクを低下させる事が示唆されている。
 
 

②「Combination therapy with metformin plus sulphonylureas versus metformin plus DPP-4 inhibitors: association with major adverse cardiovascular events and all-cause mortality.」

PMID: 24762119
 
 
・研究デザイン : コホート研究
 
P : 2型糖尿病患者(英国、41847人)
E : メトホルミン+SU剤(33983人)
C : メトホルミン+DPP-4阻害薬(5447人)
O : 全死亡・MACE(心筋梗塞又は脳卒中)
 
傾向スコアマッチングが行われており、メトホルミン+SU剤群はメトホルミン+DPP-4阻害薬群と比較して全死亡では調整ハザード比1.497(95%信頼区間1.092-2.052)、MACEでは調整ハザード比1.547(95%信頼区間1.076-2.225) とリスクを上昇させる事が示唆されている。
 
どちらもDPP-4阻害薬に有利な結果。