【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

ACCORD試験を読んでみた

かの有名なACCORD試験。結果がどうだったかについては目にすることも多いのですが、実は今までちゃんと読んだことがなかったので今回読んでみたいと思います。

 
「The action to control cardiovascular risk in diabetes study group: Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. 」
PMID: 18539917
 
 
・研究デザイン : ランダム化比較試験
 

PECO

P : HbA1cが7.5%以上で心血管疾患を有する40~70歳の2型糖尿病患者又はアテローム性動脈硬化症・アルブミン尿・左室肥大あるいは心血管疾患の危険因子(脂質以上・高血圧・喫煙・肥満)のうち2つ以上を有する55~79歳の2型糖尿病患者(アメリカ・カナダの77施設、10251人)
E : HbA1c6.0%以下を目標に治療する厳格治療(5128人)
C : HbA1c7.0~7.9%を目標に治療する標準治療(5123人)
O : 非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中の初発又は心血管死(複合エンドポイント)
 

チェック項目

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 複合エンドポイントのため注意
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : オープンラベル
・解析方法は? : ITT解析
・追跡率 : 97.8%
・追跡期間 : 平均3.5年
・患者背景 : 特に気になるような偏りは見られない。平均年齢62.2歳・HbA1c中央値8.1%・女性38%・心血管イベントの既往あり35%。
 

結果

厳格治療群(6.9%) vs 標準治療群(7.2%)→ハザード比0.90(95%信頼区間0.78–1.04)、P=0.16
 
複合エンドポイントとしては有意差なしだが、複合エンドポイントの各要素では、
 
・非致死性心筋梗塞 : ハザード比0.76(95%信頼区間0.62–0.92)、P=0.004
・非致死性脳卒中 : ハザード比1.06 (95%信頼区間0.75–1.50)、P=0.74
・心血管死 : ハザード比1.35(95%信頼区間1.04–1.76)、P=0.02
 
と非致死性心筋梗塞ではリスクを有意に下げている(NNT=100)ものの心血管死のリスクは有意に上昇している(NNH=125)。
 
また副次評価項目である全死亡でも[ハザード比1.22(95%信頼区間1.01–1.46)、P=0.04、NNH=100]と有意にリスクを上昇させており、この結果を受けて5.6年の予定だった試験が3.5年で中止されている。
 

感想

実際に読んでみるとやはり衝撃的な結果ですね。少なくともHbA1c6.0%以下を目標にするような治療は行うべきではないと感じます。そもそも一律に目標を設定するのではなく、患者の病態等を考慮しながら個別に考えていく必要があるのだと思います。
 
 
しかしまあ、複合エンドポイントとしては有意差はないけど各要素の結果はバラバラで、死亡についてはリスクを上昇させているという結果をみると、複合エンドポイントの場合は結果を見る際に注意が必要で各要素にも目を通さないといけないな。