【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

2型糖尿病患者は血圧を厳格に管理した方がやっぱり良いのか?

以前2型糖尿病患者に対して血糖値・血清脂質・血圧の多因子に対する強化療法(HbA1c6.5%未満・総コレステロール175mg/dL未満・トリグリセリド150mg/dL未満・血圧130/80mmHg未満)を行うと死亡リスクが低下するという結果のSTENO-2試験を読みましたが

 

 

今回は2型糖尿病患者に対する厳格な血圧治療に関する論文を読んでみたいと思います。

 
「UK Prospective Diabetes Study Group.: Tight blood pressure control and risk of macrovascular and microvascular complications in type 2 diabetes: UKPDS 38. 」
PMID: 9732337
 
 

PECO

P : SU剤・インスリン又はメトホルミンを使用した血糖値に対する厳格な管理(<108mg/dL)又は食事療法等による非厳格的な管理(110~270mg/dL)を行った高血圧を有する平均年齢56歳の2型糖尿病患者(イングランド・スコットランド・北アイルランド、1148人)
E : カプトプリル又はアテノロールを使用し血圧を厳格に管理(<150/85mmHg)
C : 血圧を180/105mmHgと非厳格に管理(180/105mmHg)
O : 糖尿病関連エンドポイント・糖尿病関連死・全死亡
 
※糖尿病関連エンドポイント→突然死・高血糖又は低血糖によ死亡・致死性又は非致死性の心筋梗塞・狭心症・心不全・脳卒中・腎不全・指の切断手術・硝子体出血・網膜光凝固・片目の失明・白内障摘出
 

チェック項目

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 特に記載なし
・ITT解析されいるか? : されている
・追跡率 : 96%
・追跡期間 : 平均8.4年
・患者背景 : 特に気になるような偏りは見られない
 

結果

平均血圧 : 厳格群→144/82mmHg、非厳格群→154/87mmHg
 
①糖尿病関連エンドポイント
厳格群(50.9人/1000人年) vs 非厳格群(67.4人/1000人年)→相対危険度0.76(95%信頼区間0.62-0.92)、p=0.0046、NNT=61人
 
②糖尿病関連死
厳格群(13.7人/1000人/年) vs 非厳格群(20.3人/1000人/年)→相対危険度0.68(95%信頼区間0.49-0.94)、p=0.019、NNT=152人
 
③全死亡
厳格群(22.4人/1000人年) vs 非厳格群(27.2人/1000人年)→相対危険度0.82(95%信頼区間0.63-1.08)、p=0.17、NNT=209人
 

結果

血圧を厳格に管理した方が糖尿病関連エンドポイントと糖尿病関連死のリスクを有意に下げ、全死亡に関しては有意差はないがリスクを下げる傾向にあるという結果。やはり2型糖尿病患者の血圧管理は重要だと感じます。 
 
ただ、糖尿病関連エンドポイントの各要素を見ていくとリスクを有意に下げているのは心不全だけで、突然死や原因不明の死亡等リスクを下げる傾向にあるものもあるのが気になります。有意差はあるものの複合エンドポイントとして信頼できる結果ではないのかもしれませんがどうなんでしょうね?