【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

チオトロピウムの吸入薬はデバイスの違いによって死亡リスクは変わるか?

以前チオトロピウムレスピマットで死亡が増加するという結果のメタ分析を読みましたが

 それが薬剤によるものなのかデバイスによるものなのか判断できなかったため、レスピマットとハンディヘラーの直接対決の論文を見つけたので読んでみたいと思います。

 
「Tiotropium Respimat inhaler and the risk of death in COPD.」
PMID: 23992515
 
 

PECO

P : COPDと診断された40歳以上の患者(17135人)
E : チオトロピウムレスピマット2.5μg/day(5730人)又は5μg/day(5711人)の吸入
C : チオトロピウムハンディヘラー18μg/day(5694人)の吸入
O : ①安全性→死亡までの期間、②有効性→COPDの初回憎悪(呼吸困難・咳・痰・胸部の絞扼感・喘鳴の悪化うちいずれか2つ以上が3日以上持続)
 
どうやら非劣性試験のようですね。
例によって非劣性試験の吟味の仕方がわからいので、エドキサバンのときのようにランダム化比較試験と同じようなチェックをしていきたいと思います。
 

チェック項目

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている
解析方法 : 修正したITT解析
・患者背景 : 特に気になるような偏りは見られない
・追跡率 : 99.7%
・追跡期間 : 2.3年
 

結果

非劣性マージンは1.25
 
①安全性
レスピマット2.5μg群7.7% vs ハンディヘラー18μg群7.7%→ハザード比1.00(95%信頼区間0.87-1.14)
 
・レスピマット5μg群7.4% vs ハンディヘラー18μg群7.7%→ハザード比0.96(95%信頼区間0.84-1.09)
 
②有効性
・レスピマット2.5μg群49.4% vs ハンディヘラー18μg群48.9%→ハザード比1.02(95%信頼区間0.96-1.07)p=0.56
 
・レスピマット5μg群47.9% vs ハンディヘラー18μg群48.9%→ハザード比0.98(95%信頼区間0.93-1.03)p=0.42
 

感想

死亡までの期間は非劣性マージンを下回っているので劣っていないという結果ですが、数字的にも有意にリスクを上昇させてはいないようです。
とすると、チオトロピウムの吸入薬はデバイスに関係なく死亡リスクを上昇させるのかもしれないと考えることもできるのかもしれません。
 
一つ気になったのは、何かの記事でレスピマットはミストの粒子が非常に細かいのでハンディヘラーに比べて血中に吸収される量が多いため心血管疾患のリスクが高くなるというような内容を以前読んだ事があるんですが、こちらの試験では心不全による入院をした患者・12ヶ月以内に心筋梗塞を発症した患者・12ヶ月以内に新たな治療を必要とする不安定又は生命の危険を脅かす不整脈を発症した患者については除外されているので、もしかしたら心血管疾患のリスクの高い患者ではまた違う結果になるのかもしれないと考えられるため、その場合レスピマットの使用には注意が必要だと思います。
 
それにしても、以前死亡のアウトカムに対する非劣性マージンは10%程度が妥当だというのを読んだような気がするんですが、25%までOKっていうのはどうなんでしょうね?