【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

2型糖尿病患者に対して動脈硬化性イベントの一次予防に低用量アスピリンは有効か?

「Low-DoseAspirinforPrimaryPrevention ofAtheroscleroticEventsinPatients WithType2Diabetes」

PMID: 18997198
 
 
・研究デザイン : RCT
 

PECO

P:アテローム性動脈硬化症の既往や治療のない2型糖尿病患者
E:低用量アスピリン(81mg/day又は100mg/day)を投与(1262人)
C:低用量アスピリンを投与なし(1277人)
O:動脈硬化性イベント(突然死・冠動脈又は脳血管又は大動脈が原因の死亡・非致死的急性心筋梗塞・不安定狭心症や労作性狭心症の発症・非致死的虚血性脳卒中・出血性脳卒中・一過性脳虚血発作・非致死的大動脈血管疾患・非致死的末梢血管疾患)について検討
 

チェック項目

真のアウトか? : 真のアウトカム
・アウトカムは明確か? : 明確
・盲検化されているか? : PROBEがおこなわれている
・ITT解析されているか? : されている
・結果を覆すほどの脱落者はいるか? : 7.6%のため問題ない
・追跡期間 : 4.37年
・患者背景 : 特に偏りは見られない
 

結果

一次エンドポイントはアスピリン投与群5.4%(13.6人/1000人・年)、アスピリン非投与群6.7%(17人/1000人・年)、ハザード比0.80・95%信頼区間 0.58-1.10・p=0.16で有意差なし、NNT=295
有害事象については出血性脳卒中と重篤な消化管出血の複合ではアスピリン投与群10例・アスピリン非投与群7例と有意差は認められず、重篤な消化管出血はアスピリン投与群4例・アスピリン非投与群0例。
 

感想

この結果をみると一次予防での低用量アスピリンの投与は臨床的に意義があるとは感じないが、一次予防に有効な集団がいるのではないかということで60歳以上に低用量アスピリンを投与した試験(JPPP試験)とのメタ解析が行われるようです。
 
ちなみにこの試験の参加者はその後も継続して追跡されておりそちらの研究では、収縮期血圧140mmHg未満かつ拡張期血圧90mmHg未満の群(L140)と140mmHg以上または90mmHg以上の群(H140)で比較したところ動脈硬化性イベントの発生率はH140で有意に高く、ハザード比1.88・95%信頼区間1.48-2.37・P<0.0001。
L140群を130/80mmHg未満のL130と、130mmHg以上140mmHg未満/80mmHg以上90mmHg未満のM130-140の2群に分けて比較をおこなったところハザード比0.97・95%信頼区間0.72-1.29で有意な差はなかったというような結果も出ているようです。