薬としての音楽とは?②
【私的背景】
今回は「薬としての音楽」の続きを。
過去記事
『うつ病や不安に対する効果』
音楽は、ドパミンやエンドルフィンを含む体内の化学物質分泌を促進させ、特にモーツァルトの音楽は、ドーパミン作動性神経伝達を促進することが示されているそうです。 更には、快感消失について一貫した成功が見られていると書いてあります。
残念ながら引用文献は見つけられませんでしたが、音楽がうつ病を改善させるとするシステマティックレビューやランダム化比較試験を見つけました。
Effects of music on depression in older people: a randomised controlled trial. - PubMed - NCBI
Individual music therapy for depression: randomised controlled trial. - PubMed - NCBI
落ち込んだ時や疲れた時などに、好きな音楽を聴いて元気が出たというような経験は誰にでもあるかと思いますが、音楽にはうつ病や不安を改善させる可能性があることが示唆されております。
この辺りはやはり、詳しく調べてみると仕事に活用できるかもしれません。
文中では「モーツアルトの音楽」と書かれておりますが、ここでようやくメタルの出番ではないでしょうか。
メロイックサインを掲げ、激しいリズムに合わせて頭を振っていれば不安など全て吹き飛びます。
ある研究では、メタルミュージックのファンは一般人口と比較して、不安や抑うつが同程度またはより低いことが示唆されております。
Metal music and mental health in France. - PubMed - NCBI
落ち込んだ時などは、皆さんメタルを聴きましょう。
『痛みに対する効果』
音楽は慢性疼痛管理に対する重要なツールとなり得る。
穏やかでゆっくりとした音楽が、眼科・泌尿器科、婦人科、心臓および外科の領域を含む疼痛スコアの改善や鎮痛剤の使用減少およびバイタルサインを改善させ、コルチゾールや血糖値も下げるそうです。
こちらは引用文献も見つけました。
Effect of music on power, pain, depression and disability. - PubMed - NCBI
その他に、コクランレビューでも痛みを改善させる効果が示されており、
Music for pain relief. - PubMed - NCBI
また、線維筋痛症患者の痛みについても改善することが示唆されてります。
Effects of music on pain in patients with fibromyalgia. - PubMed - NCBI
実際に各論文を読んでみると、それほど大きな効果は期待できないようにも思いますが、補助的に音楽を使用するという手もあるのではないかと思います。
痛みに関しては、メタルを聴けば一時的に痛みは吹き飛びますが、その後首の痛みに悩まされることになるのでオススメできません。
『社会的な健康』
音楽への積極的な関りはIQを高め、言語・知的発達・知覚的認知などへ影響を高める可能性があり、楽器を学び演奏することは、達成感を生み出し、自己主義・自己規律・社会性およびチームワークのスキルを養うとのことです。
こちらも引用文献を見つけました。
The psychological functions of music listening. - PubMed - NCBI
原著を読むと、音楽を聴く理由としては、自己認識・覚醒・感情制御が多いとのことです。やはり、音楽は精神面に大きく関わるものである印象です。
これまでの情報を踏まえると、音楽はそれほど大きな効果は期待できないかもしれませんが、補助的に使用するとか、プラセボ的に使用するのは有りかなという印象です。
特に、高齢者ほど音楽が必要である可能性があるというのは非常に重要な示唆であるようにも思います。
音楽の活用について、ちょっと本気で模索してみようかなと思います。
何時間くらい寝れば長生きできますか?
【私的背景】
今回は、薬と音楽の第二弾にしたかったんですが、時間が取れないので、とりあえず気になった論文を読んでいきたいと思います。
「Relationship of Sleep Duration With All‐Cause Mortality and Cardiovascular Events: A Systematic Review and Dose‐Response Meta‐Analysis of Prospective Cohort Studies」
https://doi.org/10.1161/JAHA.117.005947
Journal of the American Heart Association. 2017;6:e005947
Originally published September 9, 2017
PECO
P : 67研究に登録された3582016例
E : 睡眠時間 <7時間/日(短時間)または >7時間/日(長時間)
C : 睡眠時間 ₌7時間
O : 総死亡、全ての心血管疾患、冠動脈疾患、脳卒中
チェック項目
・研究デザイン : 観察研究のシステマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 4つなので明確とする
・評価者バイアス : 「Two investigators (J.W.Y. and S.Z.L.) independently screened all studies by title or abstract and then by a full-text evaluation. 」と記載されている。
・出版バイアス : funnel plotを用いて検討されており、視覚的には対称。
・元論文バイアス : Newcastle–Ottawa Quality Assessment Scaleを用いて評価されており、概ね7/9点以上のため大きな問題はないと思われる。
・異質性バイアス : フォレストプロットは視覚的に方向性は一致していないように見える。
・追跡期間の範囲 : 2.3~34年間
結果
【総死亡】
・短時間→相対リスク 1.13(95%信頼区間 1.10~1.17)P<0.01、I²=37.5%
・長時間→相対リスク 1.35(95%信頼区間 1.29~1.41)P<0.01、I²=76.2%
【全ての心血管疾患】
・短時間→相対リスク 1.14(95%信頼区間 1.09~1.20)P=0.04、I²=31.3%
・長時間→相対リスク 1.36(95%信頼区間 1.26~1.48)P<0.01、I²=71.2%
【冠動脈疾患】
・短時間→相対リスク 1.22(95%信頼区間 1.13~1.31)P=0.02、I²=39.6%
・長時間→相対リスク 1.21(95%信頼区間 1.12~1.30)P=0.03、I²=37.4%
【脳卒中】
・短時間→相対リスク 1.09(95%信頼区間 0.99~1.19)P=0.03、I²=40.6%
・長時間→相対リスク 1.45(95%信頼区間 1.30~1.62)P<0.01、I²=63.5%
感想
睡眠時間が7時間である群と比較して、それ以上でもそれ以下でも各アウトカムのリスクを増加させることが示唆されております。
睡眠時間は7時間がベストであるという結果ですが、観察研究のメタ解析であり、睡眠時間そのものというよりは、十分な睡眠時間が取れないような状況や、睡眠時間が長くなってしまう状況などの交絡の影響は大きいようにも思います。
個人的には7時間くらいの睡眠が体調的にもベストかなとは思いますが。
まあこの研究から、7時間寝なければいけないんだと考える必要はないように思いますが、しかし、このブログを見ていただいている方は今日くらいは早く寝てください。