【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

心房細動患者と血圧/CKD患者への厳格な血圧管理

【私的背景】

今回は気になったけど、抄録しか読めない論文を取り上げてみたいと思う。

 

①「Relationship of Hypertension and Systolic Blood Pressure With the Risk of Stroke or Bleeding in Patients With Atrial Fibrillation: The Fushimi AF Registry.」

PMID: 28575205

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28575205

 

【PECO】

: 心房細動患者(3713例)

: 高血圧あり

: 高血圧なし

: 脳卒中/全身性塞栓症、大出血

 

【チェック項目】

・研究デザイン : コホート研究(伏見レジストリー)

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 京都府伏見区の心房細動患者を可能な限り全例登録されており、大きな問題はないように思われる

・追跡期間中央値 : 1035日

 

【結果】

〇ベースライン時SBP ≧150mmHg群 vs 高血圧なし群

脳卒中/全身性塞栓症→ハザード比 1.74(95%信頼区間 1.08~2.72)

・大出血→ハザード比 2.01(95%信頼区間 1.21~3.23)

〇ベースライン時SBP <150mmHg群 vs 高血圧なし群

脳卒中/全身性塞栓症および大出血について有意な差は見られなかった

 

【感想】

血圧が高いと脳卒中/全身性塞栓症および大出血のリスクが高くなることが示唆されているが、あくまでもベースライン時の血圧であるため、どの程度の血圧で管理すべきかについては不明確。

まあ、年齢にもよるが心房細動あるなしに関わらず、SBP ≧150mmHgであれば警戒が必要か。

 

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②「Effects of Intensive BP Control in CKD.」

PMID: 28642330

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28642330

 

【PECO】

: CKD患者

: SBP <120mmHgを目標に降圧治療を行う

: SBP<140mmHgを目標に降圧治療を行う

: 心筋梗塞・急性冠症候群・脳卒中心不全・心血管死亡の複合アウトカム

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ランダム化比較試験(SPRINT試験)の事前設定解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・追跡期間中央値 : 3.3年間

 

【結果】

・心血管複合アウトカム→ハザード比 0.81(95%信頼区間 0.63~1.05)

※一次アウトカム以外

・総死亡→ハザード比 0.72(95%信頼区間 0.53~0.99)

・eGFRが50%以上低下または末期腎障害→ハザード比 0.90(95%信頼区間 0.44~1.83)

・eGFRの変化 : E群(-0.47ml/min/1.73㎡) vs (-0.32ml/min/1.73㎡)

 

【感想】

厳格な降圧治療について、心血管複合アウトカムは有意な差は見られていないものの減少傾向が見られており、一次アウトカムではないものの死亡リスクを低下させることが示唆されている。

SPRINT試験では血圧の測定を3回行って、その平均を取っており、実臨床とは乖離している点には注意が必要である。

以前読んだメタ解析とは結果がやや異なり、厳格な降圧治療を行うべきだと結論することは出来るものではない。

しかし、患者背景などを詳しく見ていきたいところではあるが、SPRINT試験に準じるとすれば、肥満があり、利尿薬をベースに使用するという条件であれば、厳格な降圧治療を行うベネフィットはあるのかもしれない。

 

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