2型糖尿病患者でのβ遮断薬の使用は心血管イベントリスクを増加させますか?
【私的背景】
β遮断薬は糖の代謝に影響を与えたり、低血糖症状をマスクしたりと糖尿病患者への使用は注意が必要であるが、臨床的にどの程度影響があるのか論文を読んでみたいと思う。
「Risk of Cardiovascular Events in Patients With Diabetes Mellitus on β-Blockers」
https://doi.org/10.1161/HYPERTENSIONAHA.117.09259
Hypertension. 2017;70:103-110
Originally published May 30, 2017
PECO
P : HbA1cが7.5%以上で心血管疾患を有する40~70歳の2型糖尿病患者又はアテローム性動脈硬化症・アルブミン尿・左室肥大あるいは心血管疾患の危険因子(脂質以上・高血圧・喫煙・肥満)のうち2つ以上を有する55~79歳の2型糖尿病患者(アメリカ・カナダの77施設、平均年齢62.9歳、女性36.7%)
E : β遮断薬の使用あり
C : 使用なし
O : 心血管イベントの初発
チェック項目
・研究デザイン : ACCORD試験データの傾向スコアマッチ比較
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている(Table 1参照)
・追跡期間 : 平均4.7±1.6年間
結果
【心血管イベント】
E群(4.0%/年) vs C群(2.7%/年)→ハザード比 1.46(95%信頼区間 1.24~1.72)P<0.001、NNH=77人/年
※二次アウトカム
【総死亡】
E群(1.7%/年) vs C群(1.5%/年)→ハザード比 1.14(95%信頼区間 0.92~1.42)P=0.23
【心血管死亡】
E群(0.9%/年) vs C群(0.6%/年)→ハザード比 1.44(95%信頼区間 1.04~2.00)P=0.02
【重度の低血糖】
E群(1.5%/年) vs C群(1.1%/年)→ハザード比 1.36(95%信頼区間 1.07~1.74)P=0.01
感想
2型糖尿病患者へのβ遮断薬の使用は心血管イベント・心血管死亡・重度の低血糖のリスクを増加させることが示唆されております。
正直なところ、研究の妥当性という部分では判断しかねますが、これまでも糖尿病患者へのβ遮断薬の使用は死亡リスクを増加させることが示唆されており(関連記事)、注意が必要であると考えます。
心血管イベント予防が目的の薬剤で心血管イベントが増えてしまうというのはやはり避けなければならないので、他の薬剤への代替が可能であれば、糖尿病患者では他のクラスの薬剤を使用するのがベターかなと思います。
関連記事