【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

アルツハイマー型認知症患者に対するBZDやZ-drugの使用は肺炎リスクを増加させますか?

【私的背景】

催眠鎮静薬と肺炎リスクについて検討されている興味深い論文を見つけたため、読んでみたいと思う。

 

「Risk of pneumonia associated with incident benzodiazepine use among community-dwelling adults with Alzheimer disease.」

PMID:28396328

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28396328

 

PECO

: アルツハイマー病と診断された地域在住の成人(フィンランド、49484例、平均年齢80歳、女性62.7%)

: ベンゾジアゼピン系薬またはZ薬の使用あり

: 使用なし

: 肺炎の発症

 

ベンゾジアゼピン系薬→ジアゼパムニトラゼパム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、オキサゼパム、アルプラゾラムロラゼパム、テマゼパム

・Z薬→ゾピクロン、ゾルピデム

 

チェック項目

・研究デザイン コホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 全国的な処方・入院などのデータが使用されており、大きな問題はないと思われる。

・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている。因子についてはTable1・2およびAppendix 1参照。

 

結果

ベンゾジアゼピン系薬またはZ薬の使用あり(8.10/100人年) vs 使用なし(6.23/100人年)→ハザード比 1.24(95%信頼区間 1.07~1.43)、NNH=54人/年

ベンゾジアゼピン系薬の使用あり(8.51/100人年) vs 使用なし(6.57/100人年)→ハザード比 1.31(95%信頼区間 1.10~1.56)、NNH=52人/年

・Z薬の使用あり(7.28/100人年) vs 使用なし(5.92/100人年)→ハザード比 1.11(95%信頼区間 0.86~1.43)、NNH=74人/年

 

感想

アルツハイマー認知症の患者において、ベンゾジアゼピン系薬の使用は肺炎リスクを増加させることが示唆されていますが、Z薬の使用では有意な差が見られていません。

しかし、Z薬使用群では症例数が少ないことが影響している可能性もあるため、Z薬でも同様に注意すべきではないかと思います。

ただ、マッチングされた因子を見ると認知機能などは含まれていないため、薬剤によるものなのか認知症の程度によるものかは明確ではない印象もあります。

いずれにしろ、ベンゾジアゼピン系薬やZ薬が処方されているような認知症患者では肺炎に対しての注意が必要ではありますが、実際に中止するというのはやはり難しいため、口腔ケアなどの対応が重要ではないかと思います。

また、期間を見ると投与開始0~30日のみで有意なリスク増加が見られており、それ以降では有意なリスク増加が見られていませんが、やはり期間が長くなるほど症例数が少なくなっているため、βエラーの可能性は高いのではないかと思います。

 

ちなみに、ベンゾジアゼピン系薬の漸減方法について興味深い記事を見つけたのでリンクを貼っておきたいと思います。

ベンゾジアゼピン系薬剤を中止するときの漸減の目安は? 地域医療ジャーナル 2017年7月号 vol.3」 https://cmj.publishers.fm/issue/3837/