【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

PPIとH2RAではどちらが腎機能低下のリスクが高いですか?

【私的背景】

とにかく継続ということで、今回はアブストラクトのみを1報だけ。真夜中にお送り致します。

 

「Association Between Proton Pump Inhibitor Use and Risk of Progression of Chronic Kidney Disease.」

PMID:28583827

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28583827

 

【PECO】

: ストックホルムの住民

: PPIの使用(105305例)

: H2ブロッカーの使用(9578例)

: CKDの進展(クレアチニンの倍化、eGFRの30%以上の低下)

 

【チェック項目】

・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究

・真のアウトカムか? : 代用のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 大きな問題はないと思われる

・追跡期間中央値 : 2.7年間

 

【結果】

クレアチニン値の倍化→調整ハザード比 1.26(95%信頼区間 1.05~1.51)

・eGFRの30%以上の低下→調整ハザード比 1.26(95%信頼区間 1.16~1.36)

※二次アウトカム

・末期腎疾患の発症→調整ハザード比 2.40(95%信頼区間 0.76~7.58)

・AKIの発症→調整ハザード比 1.30(95%信頼区間 1.00~1.69)

 

【感想】

H2ブロッカーと比較して、PPIの方が腎機能低下やAKIの発症リスクが高いことが示唆されております。

アブストラクトまでしか読めないため、特に併用薬などの交絡因子の調整については不明であり、これのみでは結論することはできませんが、これまでの報告を踏まえると、やはりPPI使用による腎機能低下やAKIの発症には十分に注意すべきであると考えます。

実際の現場では、腎機能が低下した患者に対して、H2ブロッカーからPPIへ変更されるというようなことも行われているように思いますが、それが果たして妥当なものなのかどうか、疑問が残る結果です。

 

関連記事