年齢が上がるほど抗血小板薬の出血リスクは高くなりますか?
【私的背景】
高齢者で抗血小板薬を継続すべきか否か悩ましいことが多々ある。今回は出血リスクについて検討されている論文を読んでみたいと思う。
「Age-specific risks, severity, time course, and outcome of bleeding on long-term antiplatelet treatment after vascular events: a population-based cohort study.」
PMID:28622955
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28622955
PECO
P : 急性一過性虚血発作、虚血性脳卒中または心筋梗塞の既往があり、抗血小板薬による治療が行われている患者(英国、3166例)
E : 75歳以上(アスピリンベース 95%)
C : 75歳未満(アスピリンベース 97%)
O : 出血アウトカム
チェック項目
・研究デザイン : 人口ベースのコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 一般診療の9施設のデータが使用されており、大きな問題はないように思われる
・交絡因子の調整は? : 年齢、性別、体重、血管疾患の既往、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、貧血、癌、慢性肝疾患、腎不全、心房細動、慢性心不全、消化性潰瘍、発症前の抗血小板薬の使用、発症前の胃粘膜保護薬の使用および発症後の抗血小板薬二重療法の使用について調整されている
・追跡期間 : 10年間
結果
〇全ての出血
E群(5.0%/年) vs C群(2.4%)→ハザード比 1.76(95%信頼区間 1.44~2.14)P<0.0001
・非大出血
E群(2.1%/年) vs C群(1.6%/年)→ハザード比 1.11(95%信頼区間 0.85~1.46)P=0.44
・非致死的な大出血
E群(2.0%/年) vs C群(0.6%/年)→ハザード比 2.64(95%信頼区間 1.86~3.74)P<0.0001
・致死的な出血
E群(0.7%/年) vs C群(0.1%/年)→ハザード比 5.53(95%信頼区間 2.65~11.54)P<0.0001
〇上部消化管出血
E群(2.4%/年) vs C群(0.7%/年)→ハザード比 2.94(95%信頼区間 2.11~4.09)P<0.0001
〇頭蓋内出血
E群(0.6%/年) vs C群(0.2%/年)→ハザード比 2.21(95%信頼区間 1.21~4.05)P=0.0102
〇5年間におけるPPIによる上部消化管出血の予防
・65歳未満→NNT=338人
・85歳以上→NNT=25人
感想
結果は諸々割愛させていただきました。
年齢が高いほど抗血小板薬による出血リスクは増加することが示唆されており、高齢であるほど注意が必要である印象です。
また、高齢であるほどPPIによる上部消化管出血の予防効果が高くなることが示唆されており、超高齢者などで低用量アスピリンが使用されている場合などはPPIを併用することが望ましいように思います。当たり前と言えば当たり前かもしれませんが。
この論文では、高齢者では抗血小板薬にPPIを併用すべきであるということを主張したいように感じましたが、そもそも75歳以上で抗血小板薬を継続する意義について考えなければいけません。
この論文では二次予防における抗血小板薬の効果の部分はわからないため、リスク・ベネフィットについては不明ではありますが、今後、効果に関する論文を読んで改めて考えていきたいと思います。