【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

風邪の患者には早期に抗菌薬を投与した方が良いですか?

【私的背景】

いぜんも少し取り上げたことのある論文ですが、ツイキャス抄読会で読んだ論文の復習を。

 

「Prescription Strategies in Acute Uncomplicated Respiratory Infections: A Randomized Clinical Trial.」

PMID:26719947

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26719947

 

PECO

: 18歳以上で合併症のない急性呼吸器感染症の患者(405例、スペイン、男性34.2%、平均年齢45歳、咽頭炎46.2%、急性気管支炎32.2%)

E・C : ①患者主導の遅延処方戦略→抗菌薬を渡し、数日で症状が悪化した場合に抗菌薬を服用するように指導

②再診処方戦略→数日で症状が悪化した場合に、再度受診を指示し、抗菌薬を処方する

③早期処方戦略→即時、抗菌薬を開始する

④処方なし戦略→抗菌薬を使用しない

: 症状の持続期間、症状の重症度(6ポイントリカートスケールで評価→3~4点:中等度、5~6点:重度)

 

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験

・真のアウトカムか? : 複雑に入り組んだ現代社会では、真のアウトカムと考えられる

・一次アウトカムは明確か? : 明確

・盲検化されているか? : されていない

ITT解析されているか? : されている

・追跡率 : 98.2%

・サンプルサイズ : 600例(パワー80%)

・患者背景 : ほぼ同等

 

結果

【症状消失までの平均期間(SD)】

①13.1(8.5)日 ②12.3(7.3)日 ③11.7(8.4)日 ④14.4(8.1)日

【重症の平均期間(SD)】

①5.1(6.3)日 ②4.0(4.2)日 ③3.6(3.3)日 ④4.7(3.6)日

【全ての症状の最も高い重症度平均値(IQR)】

①5点(4~6) ②5点(3~5) ③5点(3~5) ④5点(4~6)

 

感想

詳しい話はライブ履歴をきいていただければと思いますが( http://twitcasting.tv/ame_kumori/movie/377296383 )、検出力不足にも関わらず差が見られている点は興味深いです。

プラセボとの比較ではないため、抗菌薬が効いているのか、オープンラベルで自覚症状について検討されていることが影響しているのかはわかりませんが、わずかながら症状改善までの期間短縮が見られております。

とは言え個人的には、副作用や耐性菌のリスクを考えると、抗菌薬の早期処方が許容され得るものであるかは疑問であり、遅延処方戦略が妥当なものであると思います。

薬局での仕事を考えると、抗菌薬が処方されないことについて不満がある患者には、納得してもらうための材料になるかなという印象です。