【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

CKD患者はフィブラートを服用しても大丈夫ですか?

【私的背景】

今日は職場で、その日の振り返りが行われた。素晴らしい事である。

腎機能が低下している患者はフィブラートを服用しても大丈夫かという疑問に、私は「その場の1分」的に調べて答えたが、帰宅後に「その日の5分」的に文献を調べて読んでみる事にした。

 

 

「Effects of fibrates in kidney disease: a systematic review and meta-analysis.」

PMID:23083786

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23083786

 

PECO

: 8つのRCTに参加したCKD患者(16869例、平均年齢の範囲 51~67歳)

: フィブラートの使用(ゲムフィブロジル 2試験、ベザフィブラート 2試験、フェノフィブラート 4試験)

: プラセボ・魚油・食事療法

: 脂質の状態(総コレステロール・TG・LDL・HDL)、アルブミン尿症、血清クレアチニンおよび腎機能の変化、末期腎疾患、重大な臨床アウトカム(心血管イベント・心血管死亡・脳卒中・総死亡)、有害事象

 

チェック項目

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析

・真のアウトカムか? : 脂質の状態・アルブミン尿症・血清クレアチニン・腎機能の変化→代用のアウトカム、末期腎疾患・重大な臨床アウトカム、有害事象→真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されており、明確ではない

・評価者バイアス : 2人の研究者が独立して評価している。

・出版バイアス : 「Formal stastical testing to asses for publication bias was not possible」と記載されており、Funnel plotが用いられているものの研究の数が少なく、参考にならない。言語の制約はない。個々の研究者と連絡を取っている。

・元論文バイアス : Jadad scoreを用いて評価されており、大きな問題ないと思われる。

・異質性バイアス : フォレストプロットの方向性が一致していないものがあり、注意が必要

・平均追跡期間の範囲 : 3ヶ月~5.1年

 

結果

※脂質の状態については割愛

 

アルブミン尿症】

・進展→リスク比 0.86(95%信頼区間 0.76~0.98)P=0.02、I2=63%

・回帰→リスク比 1.19(95%信頼区間 1.08~1.31)P=0.0005、I2=0%

 

【血清クレアチニンおよび腎機能の変化】

・血清クレアチニン→平均差 32.61μmol/l(95%信頼区間 21.6~43.7μmol/l)P<0.001、I2=0% ※平均差 0.36mg/dl(95%信頼区間 0.24~0.48mg/dl)

・eGFRの変化→平均差 -2.67ml/min/1.73㎡(95%信頼区間 -4.81~-0.54ml/min/1.73㎡)P=0.01、I2=0%

 

【末期腎疾患】

・リスク比 0.85(95%信頼区間 0.49~1.49)P=0.575、I2=0%

 

【心血管イベント】

・eGFR 30~59.9ml/min/1.73㎡→リスク比 0.70(95%信頼区間 0.54~0.89)P=0.004、I2=0%

・eGFR ≧60ml/min/1.73㎡→リスク比 0.86(95%信頼区間 0.77~0.96)P=0.009、I2=40.4%

 

【心血管死亡】

・eGFR 30~59.9→リスク比 0.60(95%信頼区間 0.38~0.96)P=0.032、I2=0%

・eGFR ≧60→リスク比 1.01(95%信頼区間 0.66~1.56)P=0.966、I2=70.3%

 

脳卒中

・eGFR 30~59.9→リスク比 0.65(95%信頼区間 0.31~1.36)P=0.250、I2=48.7%

・eGFR ≧60→リスク比 0.88(95%信頼区間 0.72~1.06)P=0.178、I2=0%

 

【総死亡】

・eGFR 30~59.9→リスク比 0.86(95%信頼区間 0.62~1.18)P=0.355、I2=0%

・eGFR ≧60%→リスク比 1.01(95%信頼区間 0.80~1.27)P=0.948、I2=72.9%

 

結果

CKD患者のフィブラートの使用は、腎機能については若干の低下が示唆されているものの、真のアウトカムである末期腎疾患や脳卒中・総死亡については有意な差は見られず、心血管イベント・心血管死亡については有意にリスクを減少させることが示唆されております。

ただし、あくまでも仮説生成的な研究であり、議論の余地は大いにあるものと思いますが、少なくとも重篤な腎疾患のある患者などでなければ、慌てて中止するような必要はないように思います。

このテーマについてはまた改めて追っていきたいと思います。