【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

労作性狭心症の既往のある高齢者に対して長期的にイソソルビドを使用するべきですか?~WS編

今回は久々に、4月に開催した仙台ワークショップのグループワークで挙がったPECOを取り上げたいと思います。

 

P : 80歳で労作性狭心症の既往のある男性(20~30年前に1回発作あり)

E : イソソルビドを長期期間投与(20~30年間)

C : なにもしない

O : 狭心症発作、死亡率

 

これもなかなか良いPECOですね。

しかし、正直なところ、関連する論文をあまり見つけられませんでしたが、ひとまず見つけた論文を読んでいきたいと思います。

 

①[Efficacy of isosorbide-5-mononitrate retard in patients with stable exertional angina].

PMID:16279042

→前後比較試験(抄録のみ)

60歳以上の安定狭心症患者33名が対象に一硝酸イソソルビド(40~80mg/日)を投与。

 

狭心症発作 : 4.0+/-0.34 回/日→0.8+/-0.13 回/日 P<0.0001

ニトログリセリンの追加 : 2.2+/-0.32 錠/日→0.2+/-0.05錠/日 P<0.0001

・身体的健康(MOS-SF36) : 19.7+/-2.2点→45.7+/-2.22点 P<0.0001

・精神的健康(MOS-SF36) : 30.9+/-2.67点→57.5+/-2.67点 P<0.0001

 

【コメント】

残念ながら長期的な効果については不明であり、発作が1日4回程度起きている患者が対象なのでPECOには合致しませんね...。次に行ってみましょう。

 

 

②「Comparison of efficacy of nisoldipine, metoprolol, and isosorbide dinitrate in patients with stable exertional angina: a randomized, cross-over, placebo-controlled study.」

PMID:7774991

→ランダム化クロスオーバー試験(抄録のみ)

安定労作性狭心症患者15名を対象に、ニソルジピン 10mg・メトプロロール 40mg・二硝酸イソソルビド 20mgおよびプラセボを投与。

運動試験を行い、ニソルジピン群・メトプロロール群・二硝酸イソソルビド群ではプラセボ群と比較してST低下までの時間は有意に長く、運動を中止するまでの時間も3剤で有意に長かった。

 

【コメント】

こちらも長期的な効果については不明であり、やはりPECOに合致するものではありません。

 

 

残念ながら、今回見つけられたのはこの2報のみで、80歳という高齢者に対して長期的にイソソルビドを投与する意義については現時点では不明です。

今回のPECOのような例は、普段の業務でも割と多く見かけるような印象です。

そもそも本当に狭心症だったのか?という疑問が浮かびますが、20~30年程度発作が起きていないということであれば、減量・中止を考慮することも十分に可能ではないかと思います。

非常にモヤモヤしますが、少なくとも死亡の延長効果などについては不明ということで、今回はこの辺で。