NOACと消化管出血/リバーロキサバン vs ダビガトラン/頭蓋内出血後のワルファリン再開
【私的背景】
抄録しか読めないものの、気になった論文を取り上げてみたいと思う。
①「Risk of major bleeding and stroke associated with the use of VKAs, NOACs and aspirin in patients with atrial fibrillation: a cohort study」
Emilie Gieling, Hendrika A. van den Ham, Hein van Onzenoort, Jacqueline Bos, Cornelis Kramers, Anthonius de Boer, Frank de Vries and Andrea M. Burden
Accepted manuscript online: 16 FEB 2017 02:50AM EST | DOI: 10.1111/bcp.13265
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bcp.13265/full
【PECO】
P : 心房細動を有し、新規に抗血栓薬が開始された患者(英国、31497例)
E : NOAC、低用量アスピリン
C : VK拮抗薬
O : 脳卒中、大出血
【チェック項目】
・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 一般診療のデータリンクが用いられており、大きな問題はないと思われる
【結果】
〇大出血
・NOAC vs VK拮抗薬→ハザード比 2.07(95%信頼区間 1.27~3.38)
※大出血については、主に消化管出血の増加が起因[ハザード比 2.63(95%信頼区間 1.50~4.62)]
・アスピリンとVK拮抗薬では差が見られなかった
〇虚血性脳卒中
・NOAC vs VK拮抗薬→ハザード比 1.22(95%信頼区間 0.67~2.19)
・VK拮抗薬 vs アスピリン→ハザード比 2.18(95%信頼区間 1.83~2.59)
【コメント】
NOACはVK拮抗薬と比較して消化管出血リスクが高いことが示唆されている。
交絡因子の調整等については不明であり、よりリスクの高い患者においてVK拮抗薬ではなくNOACが使用されていた可能性も十分に考えられるが、以前の研究を踏まえると高齢者においてはより注意すべきである。
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②「Rivaroxaban Versus Dabigatran or Warfarin in Real-World Studies of Stroke Prevention in Atrial Fibrillation Systematic Review and Meta-Analysis」
Ying Bai, Hai Deng, Alena Shantsila, Gregory Y.H. Lip
https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.116.016275
Stroke. 2017;STROKEAHA.116.016275
Originally published February 17, 2017
【PECO】
P : 17研究に参加した心房細動患者
E : リバーロキサバン
C : ダビガトラン、ワルファリン
O : 脳卒中/全身性塞栓症、大出血
【チェック項目】
・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
【結果】
〇脳卒中/全身性塞栓症
・リバーロキサバン vs ダビガトラン→ハザード比 1.02(95%信頼区間 0.91~1.13)I2=70.2%
・リバーロキサバン vs ワルファリン→ハザード比 0.75(95%信頼区間 0.64~0.85)I2=45.1%
〇大出血
・リバーロキサバン vs ダビガトラン→ハザード比 1.38(95%信頼区間 1.27~1.49)I2=26.1%
・リバーロキサバン vs ワルファリン→ハザード比 0.99(95%信頼区間 0.91~1.07)I2=0.0%
【コメント】
リバーロキサバンは恐らく20mg/日がメインであると思われるので注意が必要であるが、これまでの研究と同様にNOAC間の比較では大出血のリスクが高いことが示唆されている。
意外にもワルファリンとの比較において脳卒中/全身性塞栓症について有意な差がみられているが、異質性がやや高い点にはやはり注意が必要である。
③「Outcomes Associated With Resuming Warfarin Treatment After Hemorrhagic Stroke or Traumatic Intracranial Hemorrhage in Patients With Atrial Fibrillation」
Peter Brønnum Nielsen, PhD1,2; Torben Bjerregaard Larsen, PhD1,2; Flemming Skjøth, PhD1,3; et al
JAMA Intern Med. Published online February 20, 2017. doi:10.1001/jamainternmed.2016.9369
http://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2603491
【PECO】
P : ワルファリンによる治療中に頭蓋内出血を起こした心房細動患者(2415例、男性61.3%、平均年齢77.1歳)
E : ワルファリンの再開あり
C : なし
O : 虚血性脳卒中/全身性塞栓症、頭蓋内出血の再発、死亡
【チェック項目】
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・交絡因子調整は? : 年齢、性別、入院期間、併存疾患、併用薬について調整されている(詳細は不明)
【結果】
〇出血性脳卒中後
・虚血性脳卒中/全身性塞栓症→調整ハザード比 0.49(95%信頼区間 0.24~1.02)
・頭蓋内出血の再発→調整ハザード比 1.31(95%信頼区間 0.68~2.50)
・死亡→調整ハザード比 0.51(95%信頼区間 0.37~0.71)
〇外傷性頭蓋内出血後
・虚血性脳卒中/全身性塞栓症→調整ハザード比 0.40(95%信頼区間 0.15~1.11)
・頭蓋内出血の再発→調整ハザード比 0.45(95%信頼区間 0.26~0.76)
・死亡→調整ハザード比 0.35(95%信頼区間 0.23~0.52)
【コメント】
外傷性頭蓋内出血後のワルファリン再開では頭蓋内出血の再発リスクの低下が示唆されているが、出血リスクが低下するということはなかなか考えづらいため、より重症ではない患者でワルファリンが再開されたという可能性も高いのではないかと思われる。
同様に死亡リスクについても解釈には注意が必要ではあるが、外傷性頭蓋内出血の患者ではワルファリンの再開が再出血のリスクとなる可能性は低いのではないかと考えられる。
一方で、出血性脳卒中後の患者では虚血性脳卒中/全身性塞栓症のリスクは低下させる可能性はあるものの、頭蓋内出血リスクについては増加する可能性がある。
以前取り上げた研究ではCHA2DS2-VASスコアが6点以上であればベネフィットがリスクを上回る事が示唆されており、そちらも参考にしたい。
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