【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

低用量NOACの有効性・安全性はどうでしょうか?

【私的背景】

これまでの研究を踏まると、抗凝固薬間で虚血性脳卒中または全身性塞栓症に対する効果に大きな差はなく、出血の副作用についてはアピキサバンが最もリスクが低いように思われるが、今回は低用量NOACの有効性および安全性ついて検討されている最新の論文を読んでみたいと思う。

 

 

「Effectiveness and safety of reduced dose non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin in patients with atrial fibrillation: propensity weighted nationwide cohort study.」

PMID:28188243

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28188243

 

PECO

: 経口抗凝固薬が開始された非弁膜性心房細動患者(デンマーク、55644例、平均年齢73.9歳、女性44.9%、CHA2DS2-VASCスコア平均3.3点、HAS-BLEDスコア平均2.4点)

: アピキサバン2.5mg×2/日、ダビガトラン110mg×2/日、リバーロキサバン15mg×1/日

: ワルファリン

: 有効性→虚血性脳卒中および全身性塞栓症、安全性→出血イベント

 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 全国的な処方のデータベースが使用されており、大きな問題はないと思われる

・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている

・追跡期間 : 平均2.3年間

 

結果

【虚血性脳卒中および全身性塞栓症】

・アピキサバン(4.78%/年) vs ワルファリン(3.74%/年)→ハザード比 1.19(95%信頼区間 0.95~1.49)

・ダビガトラン(3.31%/年) vs ワルファリン(3.74%/年)→ハザード比 0.89(95%信頼区間 0.77~1.03)

・リバーロキサバン(3.53%/年) vs ワルファリン(3.74%/年)→ ハザード比 0.89(95%信頼区間 0.69~1.16)

 

【出血イベント】

・アピキサバン(5.12%/年) vs ワルファリン(5.11%/年)→ハザード比 0.96(95%信頼区間 0.73~1.27)

・ダビガトラン(4.09%/年) vs ワルファリン(5.11%/年)→ハザード比 0.80(95%信頼区間 0.70~0.92)

・リバーロキサキサバン(5.58%/年) vs ワルファリン(5.11%/年)→ハザード比 1.06(95%信頼区間 0.87~1.29)

 

※一次アウトカムではないものの重要なアウトカム

【総死亡】

・アピキサバン(15.53%/年) vs ワルファリン(10.12%/年)→ハザード比 1.48(95%信頼区間 1.31~1.67)

・ダビガトラン(10.50%/年) vs ワルファリン(10.12%/年)→ハザード比 1.04(95%信頼区間 0.96~1.13)

・リバーロキサバン(15.81%/年) vs ワルファリン(10.12%/年)→ハザード比 1.52(95%信頼区間 1.36~1.70)

 

感想

減量の基準は日本のものと大きく変わらないように思いますが、低用量のアピキサバンではワルファリンと比較して出血リスクは減少傾向にあるものの、虚血性脳卒中/全身性塞栓症リスクについては増加傾向が見られ、一次アウトカムではないものの総死亡については有意な増加見られているという少し意外な結果でした。

リバーロキサバンについても総死亡の有意な増加がみられているものの、日本で使われる低用量(10mg/日)とは用量が違うため、日本人での一般化は難しいかもしれません。

 

あくまでも個人的な仮説ではありますが、標準用量と比較してリバーロキサバンが33.3%減、ダビガトランが26.7%減が低用量として設定されているのに対してアピキサバンでは50%減が低用量として設定されているため虚血性脳卒中や全身性塞栓症の予防については劣る可能性があるのかもしれません。

 

 

とある高齢者介護施設では、それまでワルファリンで大きな問題はなく治療が行われていた人達に対して一律に低用量アピキサバンに変更されるといった例を目の当たりにすることがありましたが、現時点ではそのような変更の仕方は早計であるように思います。

 

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