食後高血糖を改善する薬と心不全/高齢者に対する降圧薬と脳卒中/NOACとBMI
【私的背景】
抄録しか読めないものの、気になった論文を取り上げてみたいと思う。
①「Comparing the risks of hospitalized heart failure associated with glinide, sulfonylurea, and acarbose use in type 2 diabetes: A nationwide study.」
PMID:27923207
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27923207
【PECO】
P : 新規に2型糖尿病と診断された患者(台湾)
E : グリニド系薬(272140例)・SU薬(272140例)の開始
C : アカルボース(29376例)の開始
O : 心不全による入院
【チェック項目】
・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 全民健子保険のデータベースが使用されており、大きな問題はないと思われる
【結果】
・グリニド系薬 vs アカルボース→調整ハザード比1.53(95%信頼区間1.24~1.88)
・SU薬 vs アカルボース→調整ハザード比0.94(95%信頼区間0.80~1.11)
【感想】
アカルボースとの比較でグリニド系薬は心不全による入院リスクが高いことが示唆されている。今後注意が必要ではあるが、勿論これのみで結論することは出来ず、食後高血糖を改善する薬剤のベネフィットも併せて今後調べてみたいと思う。
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②「Antihypertensive Drug Use, Blood Pressure Variability, and Incident Stroke Risk in Older Adults: Three-City Cohort Study.」
PMID:27012741
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27012741
【PECO】
P : 高血圧症もしくは収縮期血圧>140mmHgまたは拡張期血圧>90mmHgのため1剤以上の降圧薬を服用している患者(5951例、年齢中央値74歳、女性60%)
E・C : 血圧変動または降圧薬の種類で比較
O : 致死的または非致死的な脳卒中
【チェック項目】
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・追跡期間中央値 : 9.1年間
【結果】
・降圧薬の使用による脳卒中の減少は見られなかった
・ARBの使用で脳卒中リスク増加[ハザード比1.56(95%信頼区間1.06~2.28)P=0.02]
・β遮断薬の使用で脳卒中リスク増加[ハザード比1.41(95%信頼区間1.03~1.92)P=0.03]
・ARBおよびβ遮断薬は収縮期血圧で調整後、虚血性脳卒中とも関連が見られた
【感想】
高齢者におけるARB・β遮断薬の使用は脳卒中リスクを増加させることが示唆されている少し衝撃の結果。
高齢者に対するARBの使用について検討されているメタ解析では脳卒中リスクについては減少させることが示唆されており、これまでの報告を踏まえると、一口に「高齢者」と言っても比較的健康な患者と虚弱患者では降圧治療のリスク・ベネフィットは大きく変わる印象があるためその点は注意したい。
高齢者の降圧治療については後日これまでの記事を一旦まとめたい。
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③「Increased Risk of Major Bleeding in Underweight Patients with Atrial Fibrillation who were prescribed Novel Oral Anticoagulants.」
PMID:28042092
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28042092
【PECO】
P : NOACを使用している心房細動患者(1353人)
E : 低体重(BMI<18.5kg/㎡)・過体重~肥満(BMI≧25.0kg/㎡)
C : 普通の体重(BMI18.5~24.9kg/㎡)
O : 大出血、総死亡、血栓塞栓症
【チェック項目】
・研究デザイン : 観察研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・追跡期間中央値 : 7ヶ月間
【結果】
〇大出血
・低体重→調整ハザード比4.135(95%信頼区間1.442~11.854)P=0.008
・過体重~肥満→調整ハザード比5.352(95%信頼区間1.579~17.935)P=0.007
〇総死亡
・低体重→調整ハザード比10.524(95%信頼区間2.949~37.561)P<0.001
・過体重~肥満→ハザード比11.385(95%信頼区間2.523~51.386)P=0.002
〇血栓塞栓症
どちらの群でも有意な差は見られなかった
【感想】
NOACを服用している心房細動患者では体重が少ないまたは多いことが出血および総死亡リスクを増加させることが示唆されている。
とはいえ、そのような患者ではNOACを低用量で使うべきだとまでは言えないが、腎機能が適応の境界にある患者等では参考になるものかもしれない。