【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

メトホルミンにもう1剤追加するなら何が良いですか?

【私的背景】

これまでに2型糖尿病患者に対してメトホルミンに追加する場合のSU薬とDPP-4阻害薬の比較について検討されている研究を取り上げてきたが(関連記事)、今回は他のクラスの薬剤についても検討されている研究を見ていきたいと思う。

 

関連記事

 

 

「Risk of overall mortality and cardiovascular events in patients with type 2 diabetes on dual drug therapy including metformin: A large database study from the Cleveland Clinic.」

PMID:25929426

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25929426

 

PECO

: 18歳以上の2型糖尿病患者(米国、13815人、平均年齢60.6±12.6歳、男性54.6%、白人75.8%)

: メトホルミンとチアゾリジン系薬・DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬のいずれかを併用

: メトホルミンとSU薬を併用

: 総死亡、冠動脈疾患、うっ血性心不全

 

チェック項目

・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : クリーブランド病院の電子カルテが用いられており、一般化は難しいかもしれない

・交絡因子の調整は? : 年齢、性別、人種、BMI、出会いの回数、世帯収入、喫煙歴、収縮期/拡張期血圧、高血圧症、脂質異常症、脳血管イベント、神経障害、網膜症、認知症、COPD、癌、心房細動、降圧薬、脂質降下薬、抗血小板薬について調整されている

・追跡期間中央値 : 4年間

 

結果

【総死亡】

・メトホルミン+チアゾリジン系薬→調整ハザード比0.860(95%信頼区間0.74~1.00)P=0.050

・メトホルミン+DPP-4阻害薬→調整ハザード比1.029(95%信頼区間0.81~1.31)P=0.82

・メトホルミン+GLP-1作動薬→調整ハザード比0.569(95%信頼区間0.30~1.07)P=0.080

 

【冠動脈疾患】

・メトホルミン+チアゾリジン系薬→調整ハザード比1.023(95%信頼区間0.97~1.08)P=0.39

・メトホルミン+DPP-4阻害薬→調整ハザード比1.056(95%信頼区間0.99~1.13)P=0.10

・メトホルミン+GLP-1作動薬→調整ハザード比1.109(95%信頼区間0.99~1.24)P=0.069

 

【うっ血性心不全】

・メトホルミン+チアゾリジン系薬→調整ハザード比1.024(95%信頼区間0.98~1.07)P=0.31

・メトホルミン+DPP-4阻害薬→調整ハザード比1.104(95%信頼区間1.04~1.17)P=0.001

・メトホルミン+GLP-1作動薬→調整ハザード比1.100(95%信頼区間0.99~1.22)P=0.073

 

感想

冠動脈疾患・総死亡について有意な差は見られていないものの、総死亡を見てみるとメトホルミンとチアゾリジン系薬・GLP-1作動薬の併用はSU薬との併用と比較して減少傾向が見られ、DPP-4阻害薬との併用ではわずかに増加傾向が見られおりますが、やはり選択バイアスの可能性は高く、これまでの高血糖が問題となる場合などで糖尿病治療薬の追加が必要な際にはDPP-4阻害薬を追加するのが妥当ではないかという考えを覆すようなものではありませんでした。

 

ベースライン時のHbA1cについては記載はなく調整も行われてはいない点が気になりますが、併用してもしなくても案外差はなかったのではないかという気もします。

 

最後に、うっ血性心不全についてはDPP-4阻害薬の併用でリスクが増加することが示唆されておりますが、乳酸アシドーシスを起こしやすくなることを考えるとメトホルミンとDPP-4阻害薬の併用によるうっ血性心不全リスク増加については十分な注意が必要であるように思います。