NOACは基準通りの用量で使用した方が良いですか?
「Off-Label Dosing of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants and Adverse Outcomes
The ORBIT-AF II Registry」
J Am Coll Cardiol 2016;68:2597-2604.
PECO
P : 21歳以上の心房細動患者(米国、5738人、平均年齢71.00歳、女性41.81%)
E : NOACを適応外用量(過小用量・過大用量)で使用
C : 推奨用量で使用
O : 総死亡、脳卒中または全身性塞栓症、心筋梗塞、入院(心血管、出血、非心血管、非出血)、大出血
チェック項目
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 米国での全国的な心房細動患者が対象となっており、大きな問題はないと思われる
・交絡因子の調整は? : 年齢、性別、人種、健康保険、CHAD2DS2-VAScスコア、ORBIT出血スコア、冠動脈疾患、脳血管イベント、うっ血性心不全、消化管出血、アスピリン、BMI、クレアチニンクリアランス、新規心房細動、左室駆出率、医師の専門
・追跡期間中央値 : 0.99年間
結果
※ダビガトラン(7.4%)、リバーロキサバン(53.6%)、アピキサバン(39%)
【総死亡】
・過小用量→調整ハザード比1.25(95%信頼区間0.89~1.76)P=0.1975
・過大用量→調整ハザード比1.91(95%信頼区間1.02~3.60)P=0.0438
【脳卒中・全身性塞栓症】
・過小用量→調整ハザード比1.17(95%信頼区間0.61~2.26)P=0.6328
・過大用量→調整ハザード比1.46(95%信頼区間0.42~5.07)P=0.5550
【心筋梗塞】
・過小用量→調整ハザード比1.32(95%信頼区間0.55~3.16)P=0.5309
・過大用量→調整ハザード比0.31(95%信頼区間0.05~1.96)P=0.2142
【全入院】
・過小用量→調整ハザード比1.09(95%信頼区間0.96~1.24)P=0.1940
・過大用量→調整ハザード比0.98(95%信頼区間0.77~1.23)P=0.8378
【心血管に関連した入院】
・過小用量→調整ハザード比1.26(95%信頼区間1.07~1.50)P=0.0065
・過大用量→調整ハザード比0.73(95%信頼区間0.53~1.02)P=0.0625
【出血による入院】
・過小用量→調整ハザード比1.00(95%信頼区間0.63~1.57)P=0.9891
・過大用量→調整ハザード比1.42(95%信頼区間0.74~2.72)P=0.2925
【出血・心血管以外の入院】
・過小用量→調整ハザード比1.14(95%信頼区間0.90~1.45)P=0.2868
・過大用量→調整ハザード比1.50(95%信頼区間0.98~2.29)P=0.0644
【大出血】
・過小用量→調整ハザード比0.80(95%信頼区間0.52~1.23)P=0.3115
・過大用量→調整ハザード比1.71(95%信頼区間0.91~3.24)P=0.0980
【出血による入院または大出血】
・過小用量→調整ハザード比0.79(95%信頼区間0.54~1.16)P=0.2256
・過大用量→調整ハザード比1.39(95%信頼区間0.80~2.41)P=0.2479
感想
日本ではNOACの過大用量での使用というのはあまりないように思いますが、過大用量での使用は総死亡リスクを増加させ、過小用量での使用は心血管疾患による入院リスクを増加させることが示唆されており有意な差は見られていないものの過小用量では脳卒中・全身性塞栓症および心筋梗塞のリスクも増加傾向が見られております。
米国と日本ではリバーロキサバンの通常用量や腎機能に応じた用量の基準に違いがある点には注意が必要であり、追跡期間も短いため特に有意な差が見られていないものについて結論することはできませんが、基準外で低用量を使用した場合十分な効果が得られない可能性が示唆されているように思います。
日本の減量基準が妥当であるかどうかという問題もあるのかもしれませんが。