SSRIと頭蓋内出血/超高齢者に対するVK拮抗薬の使用/高齢者に対するARBの使用
今回は抄録しか読めないけど気になった論文を。
①「Association of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors With the Risk for Spontaneous Intracranial Hemorrhage.」
PMID:27918771
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27918771
【PECO】
P : 新規に抗うつ薬が開始された18歳以上の患者(英国)
[症例]頭蓋内出血が発生した患者
[対照]年齢・性別・暦時間・追跡期間などでマッチングした患者
E : SSRIの使用
C : 三環系抗うつ薬の使用
O : 頭蓋内出血の発生
【チェック項目】
・研究デザイン : コホート内症例対照研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 一般診療のデータリンクが使用されており、大きな問題はないと思われる
【結果】
・頭蓋内出血→発生率比1.17(95%信頼区間1.02~1.35)
・開始後30日間の頭蓋内出血→発生率比1.44(95%信頼区間1.04~1.99)
・抗凝固薬の併用→発生率比1.73(95%信頼区間0.89~3.39)
【感想】
SSRIの使用は三環系抗うつ薬の使用と比較して頭蓋内出血リスクが増加することが示唆されている。
抗凝固薬との併用ではリスクの増加は見られていないがβエラーの可能性は高い。
いずれにしろこの研究のみで結論することは出来ないためまた改めて調べてみたいと思う。
②「Risk of Bleeding and Thrombosis in Patients 70 Years or Older Using Vitamin K Antagonists.」
PMID:27379731
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27379731
【PECO】
P : ビタミンK拮抗薬による治療が行われている患者(オランダ)
E : 90歳以上
C : 80~89歳、70~79歳
O : 臨床的に問題となる小出血および重大な出血の複合アウトカム
【チェック項目】
・研究デザイン : コホート研究
【結果】
〇臨床的に問題となる小出血および重大な出血(一次アウトカム)
・80~89歳(16.7/100人年) vs 70~79歳(14.8/100人年)→ハザード比1.07(95%信頼区間0.89~1.27)
・90歳以上(18.1/100人年) vs 70~79歳(14.8/100人年)→ハザード比1.26(95%信頼区間1.05~1.50)
〇重大な出血
・80~89歳(1.0/100人年) vs 70~79歳(0.9/100人年)→ハザード比1.09(95%信頼区間0.60~1.98)
・90歳以上(1.1/100人年) vs 70~79歳(0.9/100人年)→ハザード比1.20(95%信頼区間0.65~2.22)
〇血栓症(二次アウトカム)
・80~89歳 vs 70~79歳→ハザード比1.75(95%信頼区間1.002~3.05)
・90歳以上 vs 70~79歳→ハザード比2.14(95%信頼区間1.22~3.75)
【感想】
高齢になるほどビタミンK拮抗薬の使用による出血リスクが増加することが示唆されている。
ただし、一次アウトカムではないものの大出血については大きな差は見られず、血栓症リスクについては高齢になるほど大きくリスクが増加することが示唆されている点については注目すべきかもしれない。
やはり超高齢者においても抗凝固薬による治療は重要であり、NOACと比べて細かく用量を選択できるワルファリンは有用であるように思う。
③「Efficacy and safety of angiotensin receptor blockers in older patients: a meta-analysis of randomized trials.」
PMID:25391580
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25391580
【PECO】
P : 16試験に参加した65歳以上の患者(113386人)
E : ARBの使用あり
C : ARBの使用なし
O : 総死亡・心筋梗塞・心不全による入院・脳卒中・急性腎傷害・高カリウム血症
※一次アウトカムについて抄録には記載なし
【チェック項目】
・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
【結果】
・総死亡→リスク比1.03(95%信頼区間1.00~1.06)P=0.05
・心筋梗塞→リスク比1.04(95%信頼区間0.96~1.12)P=0.36
・心不全による入院→リスク比0.86(95%信頼区間0.74~1.00)P=0.06
・脳卒中→リスク比0.93(95%信頼区間0.87~0.99)P=0.03
・急性腎傷害→リスク比1.48(95%信頼区間1.24~1.77)P<0.001
・高カリウム血症→リスク比1.57(95%信頼区間1.13~2.19)P=0.008
【感想】
所謂、仮説生成的なメタ解析なのかもしれないが高齢者に対するARBの使用は脳卒中および心不全による入院はわずかに減少させるかもしれないが総死亡については増加する可能性が示唆されている。
現在高齢者の降圧治療においてARBは積極的に使用されている印象であるが、これは見直されなければならない。