ラニナミビルはインフルエンザの予防に効果がありますか?
私が勤めている薬局にもインフエンザの患者さんがチラホラやってくるようになりましたが、今回はラニナミビルによる予防に関する論文を2報ほど読んでみたいと思います。
①「Laninamivir octanoate for post-exposure prophylaxis of influenza in household contacts: a randomized double blind placebo controlled trial」
PMID: 23732307
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23732307
【PECO】
P : 家族がインフルエンザに罹患している、10歳以上でインフルエンザ様症状がなく予防接種を受けていない1711人(日本)
E : ラミナミビル20mg/日を2日間使用し3日目にプラセボを使用(568人)、またはラミナミビル20mg/日を3日間使用(567人)
C : プラセボを3日間使用(576人)
O : 10日間の臨床的なインフルエンザの発症(リアルタイムPCR法陽性、体温が37.5以上でインフルエンザ症状を2つ以上有する)
【チェック項目】
・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : ...仕事を休まなくてはいけなくなる事を考えると真のアウトカムと言える
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : ブロックランダム化が行われている
・盲検化が行われているか? : 二重盲検が行われている
・ITT解析が行われているか? : FASが行われている
・追跡率 : 99.5%
・サンプルサイズ : 各群470例(パワー80%)
・患者背景 : 気になるような偏りは見られない
【結果】
・ラニナミビル2日間群(3.9%) vs プラセボ群(16.9%)→相対リスク減少77.0%(95%信頼区間62.7~85.8%)P<0.001、NNT=8人
・ラニナミビル3日間群(3.7%) vs プラセボ群(16.9%)→相対リスク減少78.1%(95%信頼区間64.1~86.7%)P<0.001、NNT=8人
※有害事象
・鼻咽頭炎→ラニナミビル2日間群2.2%、3日間群3.3%、プラセボ群0.9%
・上気道の炎症→ラニナミビル2日間群2.0%、3日間群1.3%、プラセボ群0.9%
・有害事象の発生→ラニナミビル2日間群13.4%、3日間群13.0%、プラセボ群11.6%
【感想】
家族がインフルエンザに罹患してしまった場合、ラニナミビルを使用することにより自身が罹患するリスクを低下させられる事が示されており、2日間の使用と3日間の使用では大きな違いは見られておりません。
インフルエンザの予防についてNNTがおよそ8人というのは若干微妙な感じもしますが、流行期前に予防接種を受けることが出来ず、家族がインフルエンザに罹患してしまった場合は予防としての使用も考慮しても良いのかなと思いました。
まあ家族のいない私にとっては無縁な話しですけどね、ええ...
②「Inhaled Laninamivir Octanoate as Prophylaxis for Influenza in Children」
Pediatrics
December 2016, VOLUME 138 / ISSUE 6
http://pediatrics.aappublications.org/content/138/6/e20160109
※抄録のみ
【PECO】
P : 家族がインフルエンザに罹患した、10歳未満の343人(日本)
E : ラニナミビル20mgを単回使用
C : プラセボ
O : 10日間の臨床的なインフルエンザの発症
【チェック項目】
・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカムであると言える
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : 二重盲検行われている
【結果】
・E群(11%) vs C群(19%)→相対リスク低下45.8%(95%信頼区間7.5~68.2%)P=0.02、NNT=13人
・有害事象の発生については両群で同等だった
【感想】
10歳未満の小児の単回吸入でも予防効果が見られております。
重症化が懸念される場合などはやはり予防としての使用も考慮しうると考えます。しっかりと吸入できるかどうかが鍵となってくるかとは思いますが。
インフルエンザの予防としてはやはり流行期前のワクチンの接種やこまめな手洗いが基本となるかと思いますが、家族みんなで予防に注意するのが重要だなと思いました。
まあ私には無縁ですよ、ええ...
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