ジピリダモールは脳卒中患者の二次予防に効果がありますか?
今回は訳あってジピリダモールに関する論文を。
「Aspirin and extended-release dipyridamole versus clopidogrel for recurrent stroke.」
PMID:18753638
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18753638
PECO
P : 90日以内に24時間以上症状が持続する虚血性脳卒中が発症した55歳以上の患者(20332人)
E : アスピリン25mg/日+徐放性ジピリダモール200mg×2/日(10181人)
C : クロピドグレル75mg/日
O : 脳卒中の再発
チェック項目
・研究デザイン : ランダム化比較試験(非劣性試験)
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている
・ITT解析されているか? : ITT解析が行われている
・追跡率 : 99.6%
・サンプルサイズ : 20000例(パワー82%)
・患者背景 : 気になるような偏りは見られない。平均年齢66.1歳、女性36.0%。
・追跡期間 : 平均2.5年間
・非劣性マージン : 95%信頼区間の上限が1.075
結果
E群(9.0%) vs C群(8.8%)→ハザード比1.01(95%信頼区間0.92~1.11)
※二次アウトカム
・脳卒中、心筋梗塞、血管死亡の複合アウトカム
E群(13.1%) vs C群(13.1%)→ハザード比0.99(95%信頼区間0.92~1.07)
※有害事象
・重大な出血
E群(4.1%) vs C群(3.6%)→ハザード比1.15(95%信頼区間1.00~1.32)
・頭蓋内出血
E群(1.4%) vs C群(1.0%)→ハザード比1.42(95%信頼区間1.11~1.83)
感想
クロピドグレル単独と比較して超低用量アスピリン+徐放性ジピリダモールの併用は脳卒中の再発について有意な差は見られず、非劣性は示されていないという結果です。
アスピリンは日本で通常使用される用量とは違う点に注意が必要ですが、仮に常用量であった場合のリスク・ベネフィットについては不明でありこれのみでは何とも言えないというのが正直なところです。
今回は他の研究についてもいくつか見ていきたいと思います。
①「Aspirin plus dipyridamole versus aspirin alone after cerebral ischaemia of arterial origin (ESPRIT): randomised controlled trial」
PMID:16714187
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16714187
※抄録のみ
→ランダム化比較試験
6ヶ月以内に一過性脳虚血発作または軽度脳梗塞を発症した患者において、アスピリン30~325mg/日+徐放性ジピリダモール200mg×2/日併用はアスピリン30~325mg/日単独と比較して、血管死亡・非致死的脳卒中・非致死的心筋梗塞・重大な出血の複合アウトカムについて有意に減少した[ハザード比0.80(95%信頼区間0.66~0.98)、絶対リスク減少1.0%/年(95%信頼区間0.1~1.8)]
②「Dipyridamole for preventing stroke and other vascular events in patients with vascular disease.」
PMID:17636684
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17636684
※抄録のみ
→システマティックレビュー&メタ解析(コクラン)
二次予防について検討されているランダム化比較試験が対象。
ジピリダモールの使用は血管死亡リスクについて有意な差が見られなかった[相対リスク0.99(95%信頼区間0.87~1.12)]
血管イベントについては有意な減少が見られた[相対リスク0.88(95%信頼区間0.81~0.95)]
③「The Japanese aggrenox (extended-release dipyridamole plus aspirin) stroke prevention versus aspirin programme (JASAP) study: a randomized, double-blind, controlled trial.」
PMID:21502757
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21502757
※抄録のみ
→ランダム化比較試験(日本)
二次予防の患者が対象。
徐放性ジピリダモール+アスピリンの併用はアスピリン81mg/日単独と比較して虚血性脳卒中の再発について有意な差は見られなかった[ハザード比1.47(95%信頼区間0.93~2.31)]
重大な出血イベントおよび頭蓋内出血については2群間で同等だった。
死亡は併用群で0.6%、単独群で1.6%。
今回は以上ですが、非常に微妙な印象です。
トライアル間でのジピリダモールの用量が違う事が予想されますが、小規模なトライアルである③では虚血性脳卒中について差は見られていないものの、それよりは症例数が多い①では、複合アウトカムであり各項目については不明ではありますが、リスクの減少が見られているものの、脳卒中の二次予防に対して低用量アスピリンに徐放性ジピリダモールを併用した場合の効果はあまり大きなものではないのかもしれません。
また、延命効果については不明であり、現時点では少なくとも積極的に併用する必要はないように思います。
ジピリダモールは血管拡張作用を有するため虚血性心疾患やうっ血性心不全などにも使用される事があるのでそちらについてもまた改めて調べてみたいと思います。