ワルファリン服用患者へのPPI/PPIとCKD/CKD患者への抗血小板薬
今回も抄録しか読めないけど気になった論文を。
①「Association of Proton Pump Inhibitors with Reduced Risk of Warfarin-related Serious Upper Gastrointestinal Bleeding.」
PMID:27639805
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27639805
【PECO】
P : ワルファリンによる治療が開始された患者(米国、97430人)
E : PPIの併用あり
C : 併用なし
O : 上部消化管出血による入院、その他の部位の出血
【チェック項目】
・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : メディケイドおよびメディケアのデータが用いられており、大きな問題はないと思われる
【結果】
・PPI併用にて上部消化管出血による入院のリスクを低下[調整ハザード比0.76(95%信頼区間0.63~0.91)]
・その他の消化管出血による入院については有意な差が見られなかった[調整ハザード比1.07(95%信頼区間0.94~1.22)]
・消化管以外の出血による入院についても有意な差は見られなかった[調整ハザード比0.98(95%信頼区間0.84~1.15)]
・ワルファリンと抗血小板薬またはNSAIDsを使用している患者ではPPIの併用により上部消化管出血による入院のリスクを低下[調整ハザード比0.55(95%信頼区間0.39~0.77)]
・抗血小板薬またはNSAIDsを併用していないワルファリンを使用している患者ではPPI併用にて上部消化管出血による入院について有意な差は見られなかった[調整ハザード比0.86(95%信頼区間0.70~1.06)]
【コメント】
全文読めないためサブグループとして解析されているものはβエラーに注意が必要ですが、抗血小板薬やNSAIDsとワルファリンを併用している患者ではPPIが重要であることを確認。
②「Proton Pump Inhibitors and Risk of Incident CKD and Progression to ESRD.」
PMID:27080976
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27080976
【PECO】
P : 退役軍人
E : PPIの新規使用(173321人)
C : H2RAの新規使用(20270人)
O : CKDの発症、末期腎不全の進展
【チェック項目】
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 退役軍人のコホート研究であるため一般化は出来ないかもしれない
【結果】
・eGFR<60ml/分/1.73㎡→ハザード比1.22(95%信頼区間1.18~1.26)
・CKDの進展→ハザード比1.28(95%信頼区間1.23~1.34)
・末期腎不全→ハザード比1.96(95%信頼区間1.21~3.18)
・PPIの使用期間と腎アウトカムの関連が見られた
【コメント】
特に腎機能が低下している患者などでは長期間における漫然投与には十分な注意が必要。
③「Antiplatelet agents for chronic kidney disease.」
PMID:23450589
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23450589
【PECO】
P : CKD患者
E : 抗血小板薬の使用
C : プラセボの使用または治療なし
O : 心筋梗塞、総死亡、心血管死亡、脳卒中
【チェック項目】
・研究デザイン : ランダム化比較試験のシステマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・評価者バイアス : 「Two authors independently extracted data 」の記載あり
・出版バイアス : 言語の制約はなく検索されている
【結果】
・心筋梗塞→リスク比0.87(95%信頼区間0.76~0.99)
・総死亡→リスク比0.93(95%信頼区間0.81~1.06)
・心血管死亡→リスク比0.89(95%信頼区間0.70~1.12)
・脳卒中→リスク比1.00(95%信頼区間0.58~1.72)
・重大な出血→リスク比1.33(95%信頼区間1.10~1.65)
・少量の出血→リスク比1.49(95%信頼区間1.12~1.97)
【コメント】
心筋梗塞については有意なリスク低下が見られているものの、出血リスクについては有意な増加が見られており、死亡について減少傾向ではあるものの有意な差は見られていない。
リスク・ベネフィットについては不明確である印象ですが、対象患者のそもそもの心血管リスクについては抄録では不明であり、このテーマについてはまた改めて調べてみたいと思います。