【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高齢者の一次予防に対する低用量アスピリン/低用量アスピリン使用中の患者へのPPI vs H2RA/NOAC vs VKA

今回は抄録しか読めないけど気になった論文を。

 

 

①「Aspirin for Stroke Prevention in Elderly Patients With Vascular Risk Factors: Japanese Primary Prevention Project.」

PMID:27165949

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27165949

 

【PECO】

: 高血圧・脂質異常症・糖尿病を有する60~85歳の患者(日本、14464人)

: アスピリン100mgの使用有り

: 使用なし

: 致死的または非致死的な脳卒中、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作、頭蓋内出血

 

【チェック項目】

・研究デザイン : JPPP試験(ランダム化比較試験)のサブ解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・追跡期間中央値 : 5.02年

 

【結果】

・致死的または非致死的な脳卒中

E群(2.068%) vs C群(2.299%)→ハザード比0.927(95%信頼区間0.741~1.160)P=0.509

・虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作→ハザード比0.783(95%信頼区間0.606~1.012)P=0.061

・頭蓋内出血→ハザード比1.463(95%信頼区間0.956~2.237)P=0.078

70歳以上、喫煙、糖尿病のリスク因子を調整しても上記の結果を同様だった

 

【コメント】

高齢者に対する低用量アスピリンによる脳卒中への一次予防の効果は示されていない。

虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作についてはギリギリ有意差はないもののリスクを減少させる傾向にあるが、頭蓋内出血についてはリスク増加が示唆されておりリスク・ベネフィットについては未だ不明確であり、当然一次予防における低用量アスピリンの使用は推奨されるものではない。

 

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②「Similar Efficacy of Proton-Pump Inhibitors vs H2-Receptor Antagonists in Reducing Risk of Upper Gastrointestinal Bleeding or Ulcers in High-risk Users of Low-dose Aspirin.」

PMID:27641510

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27641510

 

【PECO】

: 出血性潰瘍の既往があり、低用量アスピリン(325mg/日以下)を使用している患者(香港・日本、270人)

: ラベプラゾール20mg/日の使用(138人)

: ファモチジン40mg/日の使用(132人)

: 上部消化管出血、上部消化管出および内視鏡的潰瘍の複合エンドポイント

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ランダム化比較試験

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・ランダム化が行われているか? : 行われている

・盲検化が行われているか? : 行われている

・追跡期間 : 12ヶ月

 

【結果】

・上部消化管出血

E群(0.7%) vs C群(3.1%)→P=0.16

・上部消化管および内視鏡的潰瘍

E群(7.9%) vs C群(12.4%)→P=0.26

 

【コメント】

以前取り上げたシステマティックレビュー&メタ解析では消化性潰瘍・消化管出血においてPPIはH2RAと比較して大きくリスクを減少させることが示唆されていたが、今回のランダム化比較試験ではラベプラゾール群で発生率は少ないものの有意な差は見られていない。

ただし、そもそものイベント数がかなり少ないためβエラーの可能性も高い点には注意が必要。

現時点では個人的にはやはりPPIの方が良いのではないかと考える。

 

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③「Ischaemic and haemorrhagic stroke associated with non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin use in patients with atrial fibrillation: a nationwide cohort study.」

PMID:27742807

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27742807

 

【PECO】

: 抗凝固薬が新規で開始される心房細動患者(デンマーク、43299人)

: NOAC(ダビガトラン29%、リバーロキサバン13%、アピキサバン16%)

: VKA(42%)の使用

: 脳卒中/全身性塞栓症、頭蓋内出血

 

【チェック項目】

・研究デザイン : コホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・追跡期間 : 2年

 

【結果】

・脳卒中/全身性塞栓症

ダビガトラン vs VKA→絶対リスク差0.11%(95%信頼区間-0.16%~0.42%)

リバーロキサバン vs VKA→絶対リスク差0.05%(95%信頼区間-0.33%~0.48%)

アピキサバン vs VKA→絶対リスク差0.45%(95%信頼区間-0.001%~0.93%)

・頭蓋内出血

ダビガトラン vs VKA→絶対リスク差-0.34%(95%信頼区間-0.47%~-0.21%)

リバーロキサバン vs VKA→絶対リスク差-0.13%(95%信頼区間-0.33%~0.08%)

アピキサバン vs VKA→絶対リスク差-0.20%(95%信頼区間-0.38%~-0.01%)

 

【コメント】

これまでと同様にVKAとNOACでは有効性いついては差は見られず、ダビガトラン・アピキサバンでは頭蓋内出血リスクが少ないことが示唆されている。

VKAの管理については不明であるためやはり一概にNOACの方が良いとは言えないが、それも含めてのリアルワールドという事なのかもしれない。

 

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