セマグルチドってどうですか?
今回は昨日配信させていただきましたツイキャス抄読会のまとめを。
【シナリオ】
【ツイキャスライブ履歴】
【非劣性試験について】
「Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes.」
PMID:27633186
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27633186
PECO
P : 50歳以上で心血管疾患・慢性心不全または慢性腎疾患を有するまたは60歳以上で心血管リスク因子を1つ以上有するHbA1cが7%以上である2型糖尿病患者。(3297人)
E : セマグルチド0.5mgまたは1.0mgを週1回投与(1648人)
C : プラセボを週1回投与(1649人)
O : 心血管死亡・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中の複合エンドポイントの初発
チェック項目
・研究デザイン : 非劣性試験(ランダム化比較試験)
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : 層別ランダム化されている
・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている
・ITT解析されているか? : ITT解析の他にmITT解析やPP解析も行われており大きな乖離は見られていない
・追跡率 : 98%
・サンプルサイズ : 3260人(パワー90%)
・患者背景 : ほぼ同等。平均年齢64.6±7.4歳、男性60.7%、平均体重92.1±20.6kg、2型糖尿病期間13.9±8.1年、平均HbA1c8.7±1.5%
・追跡期間中央値 : 2.1年
結果
・非劣性マージン→95%信頼区間の上限が1.8
E群(6.6%) vs C群(8.9%)→ハザード比0.74(95%信頼区間0.58~0.95) 異質性:P<0.001、優越性:P=0.02、NNT=44
※複合アウトカムの各要素
・心血管死亡:E群(2.7%) vs C群(2.8%)→ハザード比0.98(95%信頼区間0.65~1.48)P=0.92
・非致死的心筋梗塞:E群(2.9%) vs C群(3.9%)→ハザード比0.74(95%信頼区間0.51~1.08)P=0.12
・非致死的脳卒中:E群(1.6%) vs C群(2.7%)→ハザード比0.61(95%信頼区間0.38~0.99)P=0.04
感想
セマグルチドはプラセボと比較して非劣性であることが示されており、統計的にも複合アウトカムのリスクを有意に減少させることが示されております。
ただし、あくまでも主に検討されているのは非劣性についてであり優越性に関してはオマケ程度に考えておく必要があるかもしれません。もし仮に有効性を証明するのであればやはり新たに優越性試験としてデザインして行う必要があるでしょう。
非劣性マージンは1.8ということで、心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合アウトカムのリスクをプラセボと比較して1.8倍の増加までは許容するという点はなかなか衝撃的でした。
個人的にはなかなか受け入れがたい印象ではありますが配信中にコメントで示していただいたFDAのガイダンス※1には、非劣性マージンは95%信頼区間上限が1.8未満であることを示す必要があり市販後では1.3未満を示す必要がある、短期的な試験では微小血管障害についての長期的なベネフィットについては不明確であるため心血管リスクの増加については1.8と許容される範囲は広い、承認前にマージンを1.3と設定すると新薬の承認が遅延する懸念がある、というような事が書かれており色々な事情があって設定されているんだなあと思いました。
根拠としてはやはり受け入れがたいところではありますが。
ただ、少なくともセマグルチドは心血管リスクの増加という部分に関しては現時点では問題はなく、心血管疾患リスクが高く肥満のある患者で極端な高血糖が問題になるような場合等は選択肢の一つにはなり得るのかなと思いました。
自己注射以外に経口薬の試験も行われる※2とのことなので今後に期待したいところです。
少なくともプラセボと比較して劣ってはいない。
※1(青島 周一先生より)
http://www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatoryinformation/guidances/ucm071627.pdf
※2(根本 真吾先生より)