心不全の既往のある2型糖尿病患者へのDPP-4阻害薬の使用/2型糖尿病患者の起立性低血圧と死亡
今回もアブストラクしか読めないけど気になった論文を。
最近このパターン増えてきたな...。
①「Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and cardiovascular risks in patients with pre-existing heart failure」
http://heart.bmj.com/cgi/content/short/heartjnl-2016-309687v1?g=w_heart_ahead_tab
【PECO】
P : 心不全の既往のある2型糖尿病と診断された患者(台湾、196986人)
E : DPP-4阻害薬の使用あり
C : 使用なし
O : 総死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中、心不全による入院
【チェック項目】
・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 全民健康保険のデータベースが使用されており、大きな問題はないと思われる
・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている
【結果】
・総死亡
E群(67.2/1000人年) vs C群(102.85/1000人年)→ハザード比0.67(95%信頼区間0.64~0.70)
・心筋梗塞および虚血性脳卒中
E群(37.89/1000人年) vs C群(47.54/1000人年)→ハザード比0.81(95%信頼区間0.76~0.87)
・心筋梗塞
E群(12.70/1000人年) vs C群(16.18/1000人年)→ハザード比0.80(95%信頼区間0.71~0.89)
・虚血性脳卒中
E群(26.37/1000人年) vs C群(32.46/1000人年)→ハザード比0.83(95%信頼区間0.76~0.89)
・心不全による入院
有意な差は見られていない
【コメント】
観察研究ではありますが心不全の既往のある2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬の使用が総死亡・心筋梗塞・虚血性脳卒中のリスクを減少させることが示唆されており、更に心不全の入院についてはリスク増加は見られていない貴重な研究ではないでしょうか。
追跡期間についてはわかりませんが、総死亡などの発生率がやや高いような印象もありこの研究のみで結論することは出来ませんが、今後の研究に注目したいところです。
②「Orthostatic Hypotension in the ACCORD (Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes) Blood Pressure Trial: Prevalence, Incidence, and Prognostic Significance.」
PMID:27504006
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27504006
【PECO】
P : ACCORD BP試験に参加した患者(4266人)
E : 起立性低血圧あり
C : なし
O : 全死亡および心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院または死亡、非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管死亡の複合アウトカム
【チェック項目】
・研究デザイン : ACCORD BP試験の追加解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・追跡期間中央値 : 46.9ヶ月
【結果】
※収縮期血圧<120mmHgを目標とした厳格群と<140mmHgを目標とした標準群では起立性低血圧の発生に有意な差は見られていない
・全死亡→ハザード比1.61(95%信頼区間1.11~2.36)
・心不全による入院または死亡→ハザード比1.85(95%信頼区間1.17~2.93)
・その他のアウトカムについては有意な差は見られていない
【コメント】
高血圧治療における起立性低血圧には十分に注意すべきですが、起立性低血圧と死亡についてはまた改めて調べてみたいと思います。
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ACCORD BPについて少し取り上げているため。