COPDの患者はLABAを使用することで死亡リスクが増加しますか?
今回は第3回居酒屋抄読会にあまり参加することができなかったのですが、取り上げられていた論文が興味深かったため今回はそちらを読んでみたいと思います。
「Inhaled Long-Acting β2-Agonists Do Not Increase Fatal Cardiovascular Adverse Events in COPD: A Meta-Analysis.」
PMID:26378450
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26378450
PECO
P : RCT24試験に参加したCOPDの患者(20075人、平均年齢は60歳以上)
E : LABAの使用(12291人)
C : プラセボの使用(7784人)
O : 致死的な心血管有害イベント(突然死・突然の心血管死亡・心血管死亡)
チェック項目
・研究デザイン : ランダム化比較試験のメタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「two investigators independently reviewed all trials」と記載されている。
・出版バイアス : funnel plotを用いて検討されており、「no publication bias was found」と記載されている。ただし英語で書かれた論文以外は含まれていない。
・元論文バイアス : 全てRCTであり、「All trials were of good quality (Jadad score >2)」と記載されている。
・異質性バイアス : フォレストプロットの方向性は一致していないように見える。
・追跡期間 : 8試験が6か月以上、16試験が12~26週間
結果
E群(0.7%) vs C群(1.3%)→リスク比0.65(95%信頼区間0.50~0.86) 異質性:I2=0%
※サブグループ解析
・長期使用(6ヶ月以上の使用)
E群(1.1%) vs C群(2.3%)→リスク比0.64(95%信頼区間0.47~0.87) 異質性:I2=0%
・短期使用(12~26週間)
E群(0.3%) vs C群(0.4%)→リスク比0.78(95%信頼区間0.40~1.50) 異質性:I2=0%
感想
比較的高齢のCOPD患者においてLABAの使用が致死的な心血管イベントによる死亡リスクを減少させる事が示唆されている少し驚きの結果です。
ただし、システマティックレビューは行われておらず英語以外の文献は含まれていない点、RCTの評価がJadad scoreという若干古いもので行われており妥当なものであるか疑問が残る点、異質性は低いもののフォレストプロットを見ると結果がまちまちである点を考慮するとかなり割り引いて考える必要はあるように思います。
また、「Calverley 2007」という試験がかなり大きなウェイトを占めており結果が引っ張られているような印象なので改めてそちらも読んでみる必要はあるように思います。
少なくともCOPD患者においてLABAの使用が著名に心血管死亡リスクを増加させるということはないとは考えられますが、そもそもRCTのメタ解析で副作用を評価するのは妥当なものなのだろうか?という疑問も残るため改めて観察研究なども今後読んでみたいと思います。
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