【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

トリプルテラピーの有効性・安全性はどうですか?②

 

「Oral anticoagulation and antiplatelets in atrial fibrillation patients after myocardial infarction and coronary intervention.」

PMID:23747760

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23747760

 

PECO

P : 心房細動を有する心筋梗塞およびPCIまたはどちらか一方で入院していた患者(デンマーク、12165人、平均年齢75.6±10.3歳、男性60.7%)

: 抗凝固薬+アスピリン、抗凝固薬+クロピドグレル、抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレル(トリプルテラピー)

: アスピリン+クロピドグレル(DAPT)

: 有効性→心筋梗塞または冠動脈疾患による死亡・致死的または非致死的な虚血性脳卒中・総死亡、安全性→致死的または非致死的な出血

 

チェック項目

・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・集団の代表性は? : デンマークでの全国的なレジストリが用いられており、大きな問題はないと思われる

・交絡因子の調整は? : 年齢・性別・暦年・心筋梗塞/PCI・HAS-BLEDスコア・CHADS2スコア

・追跡期間 : 1年間

 

結果

[有効性]

①心筋梗塞または冠動脈疾患による死亡

・抗凝固薬+アスピリン(17.7%) vs DAPT(21.3%)→ハザード比0.78(95%信頼区間0.66~0.91)

・抗凝固薬+クロピドグレル(9.6%) vs DAPT(21.3%)→ハザード比0.56(95%信頼区間0.40~0.79)

・トリプルテラピー(16.2%) vs DAPT(21.3%)→ハザード比0.83(95%信頼区間0.68~1.00)

 

②虚血性脳卒中

・抗凝固薬+アスピリン(5.6%) vs DAPT(6.3%)→ハザード比0.81(95%信頼区間0.61~1.08)

・抗凝固薬+クロピドグレル(2.8%) vs DAPT(6.3%)→ハザード比0.51(95%信頼区間0.28~0.95)

・トリプルテラピー(4.1%) vs DAPT(6.3%)→ハザード比0.67(95%信頼区間0.46~0.98)

 

③総死亡

・抗凝固薬+アスピリン(15.6%) vs DAPT(17.5%)→ハザード比0.91(95%信頼区間0.77~1.08)

・抗凝固薬+クロピドグレル(7.1%) vs DAPT(17.5%)→ハザード比0.54(95%信頼区間0.35~0.76)

・トリプルテラピー(8.9%) vs DAPT(17.5%)→ハザード比0.61(95%信頼区間0.47~0.77)

 

[安全性]

①出血

・抗凝固薬+アスピリン(9.7%) vs DAPT(6.9%)→ハザード比1.44(95%信頼区間1.14~1.83)

・抗凝固薬+クロピドグレル(10.9%) vs DAPT(6.9%)→ハザード比1.63(95%信頼区間1.15~2.30)

・トリプルテラピー(14.3%) vs DAPT(6.9%)→ハザード比2.08(95%信頼区間1.64~2.65)

 

 ※トリプルテラピー vs 二剤療法

・トリプルテラピーは心筋梗塞または冠動脈疾患による死亡において、抗凝固薬+アスピリン・抗凝固薬+クロピドグレル・DAPTとのいずれの比較においても有意な差は見られていない[ハザード比0.96(95%信頼区間0.77~1.19)][ハザード比0.69(95%信頼区間0.48~1.00)][ハザード比1.17(95%信頼区間0.96~1.42)]

 

・DAPTは虚血性脳卒中のリスク増加が見られる[ハザード比1.50(95%信頼区間1.03~2.20)]

 

・トリプルテラピーと比較すると抗凝固薬+クロピドグレルでは出血リスクについて有意な差は見られず[ハザード比0.78(95%信頼区間0.55~1.12)]、抗凝固薬+アスピリン・DAPTではリスク減少が見られる[ハザード比0.69(95%信頼区間0.53~0.90)][ハザード比0.48(95%信頼区間0.38~0.61)]

 

・トリプルテラピーと比較すると抗凝固薬+アスピリン・DAPTでは総死亡リスク増加が見られ[ハザード比1.52(95%信頼区間1.17~1.99)][ハザード比1.60(95%信頼区間1.25~2.05)]、抗凝固薬+クロピドグレルでは有意な差は見られていない[ハザード比0.87(95%信頼区間0.56~1.34)]

 

感想

前回の記事では対象となっているような患者群ではDAPTのみでは心許ないというように書きましたが、今回の後ろ向きコホート研究では抗凝固薬あり群と比較するとやはり出血は少ないものの虚血性脳卒中・総死亡のリスクは増加することが示唆されており、心房細動患者に対する抗凝固薬の重要性について再確認させられるような結果になっております。

今回の研究と比べると症例数が少ないまたは追跡期間が違う点が影響しているのかもしれませんが前回のコホート研究ではトリプルテラピーとDAPTの比較においてMACEや総死亡などについて有意な差はみられていなかったため結果の違いが気になるところですが、やはり抗凝固薬+抗血小板薬1剤、とりわけ抗凝固薬+クロピドグレルがリスク・ベネフィットを考慮すると妥当なところであるように思います。

ただ、今回の研究では交絡因子の調整については十分に行われておらずやはり現時点では結論することは出来ないため追って他の論文についてもまた改めて読んでみたいと思います。

 

今回の研究では抗凝固薬としてワルファリン・フェンプロクモンが処方されている患者が対象となっておりますが、NOACではどうなのかというところも気になるところです。

 

関連記事