【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

シロスタゾールは認知機能低下の予防効果がありますか?

今回は気になった事例があったため少し調べてみました。

 

 

「Cilostazol add-on therapy in patients with mild dementia receiving donepezil: a retrospective study.」

PMID:24586841

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24586841

 

PECO

: MMSEスコアがめ26点以下だった患者(日本、156人)

: ドネペジル+シロスタゾール

: ドネペジル単独

: MMSEスコアの変化

 

チェック項目

・研究デザイン :後ろ向き観察研究

・真のアウトカムか? : スコアによる評価であり、代用のアウトカムであると考える

・調整された交絡因子は? : 性別・年齢・血管リスク因子(高血圧症・糖尿病・脂質異常症)・薬物治療(Ca拮抗薬・ACE阻害薬・利尿薬・α/β遮断薬)

・集団の代表性は? : 洲本伊月病院の診療記録が用いられており、一般化は出来ないかもしれない

 

結果

[中等度~重度の認知症患者(MMSEスコアが21点以下)]

E群(-0.7±2.8/年) vs C群(-0.9±2.6/年) P=0.72

[軽度の認知症(MMSEスコアが22~26点)]

E群(-0.5±1.6/年) vs C群(-2.2±4.1/年) P=0.022

 

感想

中等度~重度の認知症患者では有意な差が見られなかったものの、軽度の認知症の患者では有意にスコアの改善が見られていますがその差は1.7点であまり臨床的に意味のある差ではないように思います。

また、症例数が少ないため仕方がないのかもしれませんが交絡因子の調整についても十分に行われてはいない点(例えば心血管疾患の既往や抗コリン薬など)、シロスタゾール単独としては効果が不明な点や副作用も含めて考えると少なくともこの結果のみで考えると認知機能低下予防としてわざわざ服用させる必要はないかなという印象です。

 

もう1報同じ施設で行われた後ろ向き研究(PMID:25707423)を見つけましたが抄録しか読めず、「認知症治療薬を服用していない患者においてシロスタゾールは有意にMMSEスコアを改善した」というような事が書いてありますが残念ながら数字については記載されておりませんでした。

 

いずれにしろシロスタゾールが認知症の進行を予防するとは言い難いなというのが率直な感想です。