【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

CKD患者ではより厳格な血圧管理を行う必要がありますか?

 

「Blood pressure lowering and major cardiovascular events in people with and without chronic kidney disease: meta-analysis of randomised controlled trials.」

PMID:24092942

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24092942

 

PECO

: ベースライン時のeGFRが≧60mL/分/1.73m2(121995人)または<60mL/分/1.73m2(30295人)であるRCT25試験に参加した患者(152290人)

: 降圧薬の使用または積極的な降圧治療

: プラセボやその他の降圧薬または積極的ではない降圧治療

: 重大な心血管イベント(脳卒中・心筋梗塞・心不全・心血管死亡)

 

チェック項目

・研究デザイン : メタ解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 明確

・評価者バイアス : 本論文には2人の研究者が独立していたか特に記載はなく、プロトコル論文は有料のため読めず。

・出版バイアス : funnel plotにより検討されているが、「There was some evidence of publication bias (Egger’s test P=0.05)」と記載されている。

・元論文バイアス : Cochrane Collaboration’s tool を用いて評価されており、「The trials involved had a low risk of bias」と記載されている。また、appendix table 1 を見ても大きな問題はないと思われる。

・異質性バイアス : フォレストプロットは視覚的に方向性が一致している。

・患者背景 : 平均年齢eGFR≧60→63歳・eGFR<60→68歳、 男性60%・40%、平均eGFR81・52、平均ベースライン時血圧156/91・160/90、平均追跡期間中血圧141/81・144/80

 

結果

 [ACE阻害薬 vs プラセボ]

・eGFR≧60→ハザード比0.81(95%信頼区間0.72~0.91)、I2=59%

・eGFR<60→ハザード比0.81(95%信頼区間0.73~0.89)、I2=0%

・全体→ハザード比0.81(95%信頼区間0.73~0.90)、I2=61%

 

[Ca拮抗薬 vs プラセボ]

・eGFR≧60→ハザード比0.71(95%信頼区間0.58~0.93)、I2=0%

・eGFR<60→ハザード比0.74(95%信頼区間0.53~1.03)、I2=0%

・全体→ハザード比0.72(95%信頼区間0.58~0.89)、I2=0%

 

[強化治療 vs 非強化治療 ]

・eGFR≧60→ハザード比0.87(95%信頼区間0.73~1.03)、I2=0%

・eGFR<60→ハザード比1.24(95%信頼区間0.62~2.48)、I2=0%

・全体→ハザード比0.93(95%信頼区間0.80~1.07)

 

[降圧薬のクラス間での比較]

ACE阻害薬 vs 利尿薬/β遮断薬、Ca拮抗薬 vs 利尿薬/β遮断薬、ACE阻害薬 vs Ca拮抗薬では腎機能低下例・非低下例においていずれも有意な差は見られていない。

 

感想

CKD患者について当然ながら降圧治療を行うことで心血管イベントのリスクを減少させ、降圧薬のクラスによる大きな差はないことが示唆されていますが、腎機能が低下していない患者と比較してより積極的な降圧治療を行う必要があるかについてはやや疑問が残る結果。

 

サブグループ解析ではありますが、SPRINT試験でもCKD患者では厳格な降圧治療は標準的な治療と比較して心筋梗塞・急性冠症候群・脳卒中・心不全・心血管死亡の複合アウトカムについては有意な差は見られておりません。

 

 

いずれにしろこのメタ解析での強化治療と非強化治療の比較においてかなり大きなウェイトを占めているHOT試験について読んでみる必要がありそうなのでまた後程。