【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高齢の糖尿病患者はNSAIDsの服用を避けるべきですか?

「Risk of gastrointestinal bleeding and cardiovascular events due to NSAIDs in the diabetic elderly population.」

PMID:26719806

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26719806

 

PECO

: 過去1年以内にNSAIDsが処方されていない糖尿病を有する65歳以上の患者(韓国、117610人、男性48.8%、平均年齢74.3歳)

: NSAIDsの新規開始あり

: 新規開始なし

: 消化管出血・心血管イベント(心筋梗塞または虚血性脳卒中)

 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

交絡因子の調整は? : 経口スコアマッチングが行われている(年齢・性別・既往歴・併用薬についてマッチングが行われている、詳しくはTable1,2参照)

・集団の代表性は? : ユニバーサルヘルスケアのデータベースが用いられており、大きな問題はないと思われる

 

結果

※ロキソプロフェンNa・アセクロフェナク・タルニフルメート・デクスイブプロフェンの処方が全体の69.1%を占めている

 

[消化管出血]

E群(8.11/1000人年) vs C群(4.82/1000人年)→調整ハザード比1.68(95%信頼区間1.54~1.83)、NNH=111(平均追跡期間2.896年間)

 

[心筋梗塞または虚血性脳卒中]

E群(31.54/1000人年) vs C群(25.98/1000人年)→調整ハザード比1.20(95%信頼区間1.15~1.25)、NNH=77(平均追跡期間2.778年)

 

感想

よく使われるNSAIDsについて日本とは違いがあるものの、糖尿病を有する高齢者においてNSAIDsの使用が消化管出血はもちろんですが心筋梗塞・虚血性脳卒中のリスクを増加させることが示唆されております。

特にNNHを見てみると消化管出血よりも心筋梗塞・虚血性脳卒中のリスクの方が大きい点に少し驚きです。

 

特に高齢の方ではNSAIDsを止めたら痛みが出てきたなどと訴えられる事もしばしばあり、こういった薬を中止することの難しさを感じておりますが、少なくともこの研究の対象になっている糖尿病を有する高齢者や心血管イベントリスクの高い高齢者では漫然投与は避けるべきと再確認しました。