【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

降圧薬のアドヒアランスと死亡/DPP-4阻害薬と心不全による入院/バレニクリンと精神神経有害事象

今回は抄録しか読めないけど気になった論文をいくつか。

 
①「Medication Adherence and the Risk of Cardiovascular Mortality and Hospitalization Among Patients With Newly Prescribed Antihypertensive Medications.」
PMID: 26865198
 
[PECO]
P : 20歳以上で高血圧症のため新規に降圧薬が処方された20歳以上の患者(韓国、33728人)
E : アドヒアランス不良(<50%)
C : アドヒアランス良好(≧80%)
O : 虚血性心疾患による死亡・脳出血による死亡・脳梗塞による死亡
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
 
[結果]
・虚血性心疾患による死亡→ハザード比1.64(95%信頼区間1.16~2.31)
・脳出血による死亡→ハザード比2.19(95%信頼区間1.28~3.77)
・脳梗塞による死亡→ハザード比1.92(95%信頼区間1.25~2.96)
 
[感想]
降圧薬のアドヒアランスが不良の場合、良好な人と比較すると死亡のリスクが高くなることが示唆されていますが、そもそもアドヒアランスが良好な人は不良な人と比較すると健康的な生活をしている可能性もあり、翻ってアドヒアランスが不良な患者についてはどういった生活を送っているのかも考慮する必要があるのかもしれません。
 
 
 
②「Risk for Hospitalized Heart Failure Among New Users of Saxagliptin, Sitagliptin, and Other Antihyperglycemic Drugs: A Retrospective Cohort Study.」
PMID: 27110660
 
[PECO]
P : 18歳以上の2型糖尿病患者
E : DPP-4阻害薬
C : その他の血糖降下薬
O : 心不全による入院
 
[チェック項目]
・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・平均追跡期間 : 7~9ヶ月
 
[結果]
・サキサグリプチン vs シタグリプチン→ハザード比0.83(95%信頼区間0.70~0.99)
・サキサグリプチン vs ピオグリタゾン→ハザード比0.63(95%信頼区間0.47~0.85)
・サキサグリプチン vs SU薬→ハザード比0.69(95%信頼区間0.54~0.87)
・サキサグリプチン vs インスリン→ハザード比0.61(95%信頼区間0.50~0.73)
 
・シタグリプチン vs ピオグリタゾン→ハザード比0.74(95%信頼区間0.64~0.85)
・シタグリプチン vs SU薬→ハザード比0.86(95%信頼区間0.77~0.95)
・シタグリプチン vs SU薬→ハザード比0.71(95%信頼区間0.64~0.78)
 
[感想]
やや追跡期間が短いような気もしますが、サキサグリプチンについても心不全による入院は他の血糖降下薬と比較して心不全による入院のリスクは増加させず、むしろリスクを低下させる事が示唆されています。
 
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③「Neuropsychiatric safety and efficacy of varenicline, bupropion, and nicotine patch in smokers with and without psychiatric disorders (EAGLES): a double-blind, randomised, placebo-controlled clinical trial.」
PMID: 27116918
 
[PECO]
P : 禁煙について意欲のある喫煙者(8144人)
E : バレニクリン(1mg/日)又はブプロピオン(150mgを1日2回)
C : プラセボ又はニコチンパッチ(21mg/日)
O : 中等度から重度の精神神経有害事象・9~12週後の禁煙の成功
 
[チェック項目]
・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている
 
[結果]
〇精神神経有害事象
※非精神科コホート
・バレニクリン(1.3%) vs プラセボ(2.4%)→リスク差−1.28(95%信頼区間−2·40~−0·15)
・バレニクリン(1.3%) vs ニコチンパッチ(2.5%)→リスク差−1.07(95%信頼区間−2·21~0·08)
 
・ブプロピオン(2.2%) vs プラセボ(2.4%)→リスク差−0.08(95%信頼区間−1·37~1·21)
・ブプロピオン(2.2%) vs ニコチンパッチ(2.5%)→リスク差0.13(95%社−1·19~1·45)
 
※精神科コホートでは全て有意な差は見られていない
 
〇禁煙の成功
・バレニクリン vs プラセボ→オッズ比3·61(95%信頼区間3·07~4·24)
・バレニクリン vs ブプロピオン→オッズ比1·75(95%信頼区間1·52~2·01)
・バレニクリン vs ニコチンパッチ→オッズ比1·68(95%信頼区間1·46~1·93)
・ブプロピオン vs プラセボ→オッズ比2·07(95%信頼区間1·75~2·45)
・ニコチンパッチ vs プラセボ→オッズ比2·15(95%信頼区間1·82~2·54)
 
[感想]
バレニクリンによる精神神経有害事象の増加は見られていませんが、非精神科と精神科ではイベントの発生率に決して小さくはない違いがある点が興味深いです。
禁煙自体の精神に対する影響も後で調べてみようかなと思います。
 
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