【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

スタチン・降圧薬のアドヒアランスと脳卒中死/頭蓋内出血既往とワルファリン/自宅で最期を迎えるか、病院で最期を迎えるか

今回は全文は読めないけど気になった論文をいくつか。

 
①「Poor Adherence to Statin and Antihypertensive Therapies as Risk Factors for Fatal Stroke」
J Am Coll Cardiol. 2016;67(13):1507-1515. doi:10.1016/j.jacc.2016.01.044
 
[PECO]
P : 30歳以上で脳卒中又は心血管疾患の既往がない高コレステロール血症の患者58266人
E : スタチン・降圧薬の服用なし
C : スタチン・降圧薬の服用あり
O : 脳卒中による死亡
 
[チェック項目]
・研究デザイン : 集団ベースのコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・追跡期間 : 平均5.5年間
 
[結果]
〇全ての高コレステロール血症患者
・スタチンの服用なし vs スタチンの服用あり→調整オッズ比2.04(95%信頼区間1.72~2.43)
 
〇高コレステロール血症+高血圧
・スタチン及び降圧薬の服用なし→調整オッズ比7.43(95%信頼区間5.22~10.59)
・スタチン服用なし及び降圧薬の服用あり→調整オッズ比1.82(95%信頼区間1.43~2.33)
・スタチンの服用あり及び降圧薬の服用なし→調整オッズ比1.30(95%信頼区間0.53~3.20)
 
[コメント]
「服用なし」「服用あり」と記載しましたが原文では「nonadherent 」「adherent」と書かれており、スタチン・降圧薬が処方されている患者での「アドヒアランス不良群」と「アドヒアランス良好群」による比較と思われ、アドヒアランスの重要性が示唆されております。
対象患者が30歳以上と年齢の幅が広い点に注意が必要です。
 
 
 
②「The Use of Oral Anticoagulants for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation Patients with History of Intra-Cranial Hemorrhage」
CIRCULATIONAHA.115.019794 Published online before print March 11, 2016, doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.115.019794
 
[PECO]
P : 頭蓋内出血の既往があり、CHA2DS2-VAScスコアが2点以上の心房細動患者12917人(台湾)
E・C : CHA2DS2-VAScスコアの点数で比較
O : 頭蓋内出血及び虚血性脳卒中
 
[チェック項目]
・研究デザイン : 観察研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
 
[結果]
・CHA2DS2-VAScスコアが6点以上におけるワルファリンの使用→虚血性脳卒中に対するNNT=37、頭蓋内出血に対するNNH=56
・CHA2DS2-VAScスコア6点未満におけるワルファリンの使用→虚血性脳卒中に対するNNT=63、頭蓋内出血に対するNNH=53
 
[コメント]
CHA2DS2-VAScスコアが6点以上のハイリスク患者ではワルファリンの使用による虚血性脳卒中に対するベネフィットが頭蓋内出血のリスクを上回る事が示唆されておりますが、DOACではどうなのかも今後注視していきたいです。
 
 
 
③「Multicenter cohort study on the survival time of cancer patients dying at home or in a hospital: Does place matter?」
PMID: 27018875
 
[PECO]
P : 余命の限られた癌患者2069人(日本)
E : 自宅で緩和ケアを行う
C : 病院で緩和ケアを行う
O : 生存期間
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
 
[結果]
・予後が数日→E群:生存期間中央値13日(95%信頼区間10.3~15.7) vs C群:9日(95%信頼区間8.0~10.0) P=0.006
・予後が数週間→E群:36日(95%信頼区間29.9~42.1) vs C群:29日(95%信頼区間26.5~31.5) P=0.007
・予後が数ヶ月→有意な差は見られなかった
 
[コメント]
自宅に戻ることによる生存期間の短縮は見られずむしろ若干長くなることが示唆されておりますが、自宅の方が長く生きられるとまでは結論できません。
患者の希望に応じて、在宅を後押しするような研究結果ではあるかもしれません。
 
 
 
本日はここまでですが、ちょっと告知を。
 
6月11日に浅草にて薬剤師のジャーナルクラブ「JJCLIP」によるワークショップが開催されます。
 
内容については「なぜ薬剤師が医学論文を読まなければならないか、そしてEvidence Based Medicine(EBM)という行動様式がどのように薬剤師の生涯学習に役立つかというところからその視点に切り込む。 次に、提示した症例とエビデンスを使って実際にどのようなアプローチが可能かについてロールプレイを交えてグループディスカッションを行い、疑似体験を通してEBMへの理解を深める。」と書かれており、論文を読む事の必要性・論文情報の活用の仕方について大いに学べる絶好の機会であり、私も未熟者ではありますが「論文を読むことで何が変わったか」についてお話しさせていただく事になりましたので、興味がある方又は興味がない方も是非ご参加下さい!