【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

アセトアミノフェンと心血管イベント・大出血は関連しますか?

「Paracetamol, Ibuprofen, and Recurrent Major Cardiovascular and Major Bleeding Events in 19 120 Patients With Recent Ischemic Stroke.」

PMID: 26979864
 

PECO

P : PERFORM試験に参加した患者19120人
[症例]心血管イベント(死亡・心筋梗塞・脳卒中)又は大出血の発生があった患者2962人(平均年齢69歳)
[対照]脳卒中リスクスコア・年齢・動脈性高血圧・糖尿病・心筋梗塞又はその他の心血管疾患の既往・末梢動脈疾患の既往・喫煙・一過性脳虚血発作又は虚血性脳卒中の既往についてマッチングした5924人(平均年齢70歳)
E : アセトアミノフェン又はイブプロフェンの使用あり
C : 使用なし
O : MACE(心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中)・大出血
 

チェック項目

・研究デザイン : ネステッド・ケースコントロール研究
・交絡因子の調整は? : 脳卒中リスクスコア・アセトアミノフェン及びイブプロフェンの以前の使用について調整されている
・暴露の定義は? : 患者が使用頻度を記録し、「使用なし」「時折の使用」「日常的に使用」の3グループに分けられている
・集団の代表性は? : ランダム化比較試験に参加している患者が対象であり、一過性脳虚血発作又は虚血性脳卒中の既往がありテルトロバン又はアスピリンによる治療が行われているため、一般化はできないかもしれない
 

結果

[アセトアミノフェンの使用]
・MACE→調整オッズ比1.21(95%信頼区間1.04~1.42)P=0.02
・大出血→調整オッズ比1.60(95%信頼区間1.26~2.03)P<0.0001
 
[イブプロフェンの使用]
・MACE→調整オッズ比1.03(95%信頼区間0.79~1.36)P=0.81
・大出血→調整オッズ比1.34(95%信頼区間0.88~2.02)P=0.17
 

感想

交絡因子に対する配慮が十分に行われていないように思いますが、「傾向スコアマッチングによる調整を行った解析と同等の結果」というような事が書いてあります。そちらの結果については記載されてはおりませんが。。
 
アセトアミノフェンの使用がMACE・大出血と関連することが示唆されていますが、やはり集団についてはかなり限定的であり、大出血については3000mg/日以上の使用で有意差が出ているため[調整オッズ比3.72(95%信頼区間1.58~8.75)]、日本で通常使用される用量とはギャップがある点に注意が必要です。
 
 
とは言え心血管イベントリスクが高く、抗血症板薬を服用している場合等は注意すべきであり、例えば風邪(PMID: 23818046 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23818046 )・インフルエンザ(PMID: 26638130 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26638130 )・腰痛(PMID: 25828856 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25828856 )等に対する効果はいまいち不明のためそのような患者の場合はリスク・ベネフィットについて十分に考慮する必要があると思います。
 
アセトアミノフェンの「効果」についてもまた改めて調べてみようかと思います。