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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

血糖降下薬は細小血管障害の予防に効果がありますか?

「Diabetes treatments and risk of amputation, blindness, severe kidney failure, hyperglycaemia, and hypoglycaemia: open cohort study in primary care」

BMJ 2016; 352 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i1450 (Published 30 March 2016)
Cite this as: BMJ 2016;352:i1450
 

PECO

P : 25~84歳の2形糖尿病と診断された469688人(英国)
E : 血糖降下薬の単独又は併用
C : 血糖降下薬の使用なし又は他の血糖降下薬の使用
O : 四肢切断・失明・腎不全・高血糖・低血糖
 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・交絡因子の調整は? : 性別・年齢・暦年・糖尿病と診断されてからの期間・人種・生活水準・喫煙・抗凝固薬・チアジド・ACE阻害薬・ARB・Ca拮抗薬・スタチン・アスピリン・アウトカムが複数発症・高血圧・心血管疾患・心房細動・慢性腎不全・関節リウマチ・心臓弁膜症・末梢血管疾患・BMI・収縮期血圧・HbA1c・血清クレアチニン・コレステロール/HDL比
・集団の代表性は? : 英国のプライマリケアデータベースから抽出されており大きな問題はないように思われる
 

結果

※血糖降下薬使用なしとの比較
[失明]
・チアゾリジン薬→14.4/10000人年、調整ハザード比0.71(95%信頼区間0.57~0.89)
・DPP-4阻害薬→16.7/10000人年、調整ハザード比0.83(95%信頼区間0.69~1.01)
・メトホルミン→19.3/10000人年、調整ハザード比0.70(95%信頼区間0.66~0.75)
・SU薬→24.7/10000人年、調整ハザード比0.96(95%信頼区間0.89~1.04)
・インスリン→36.0/10000人年、調整ハザード比1.48(95%信頼区間1.28~1.72)
・その他の血糖降下薬→18.8/10000人年、調整ハザード比0.86(95%信頼区間0.65~1.13)
 
[高血糖]
・チアゾリジン薬→54.6/10000人年、調整ハザード比0.88(95%信頼区間0.76~1.02)
・DPP-4阻害薬→56.8/10000人年、調整ハザード比0.93(95%信頼区間0.82~1.05)
・メトホルミン→75.3/10000人年、調整ハザード比0.65(95%信頼区間0.62~0.67)
・SU薬→74.5/10000人年、調整ハザード比0.99(95%信頼区間0.94~1.04)
・インスリン→128.4/10000人年、調整ハザード比1.69(95%信頼区間1.53~1.87)
・その他の血糖降下薬→74.2/10000人年、調整ハザード比0.95(95%信頼区間0.80~1.14)
 
[低血糖]
・チアゾリジン薬→65.1/10000人年、調整ハザード比1.22(95%信頼区間1.10~1.37)
・DPP-4阻害薬→45.8/10000人年、調整ハザード比0.86(95%信頼区間0.77~0.96)
・メトホルミン→37.7/10000人年、調整ハザード比0.58(95%信頼区間0.55~0.61)
・SU薬→82.7/10000人年、調整ハザード比2.93(95%信頼区間2.78~3.09)
・インスリン→210.3/10000人年、調整ハザード比4.57(95%信頼区間4.27~4.89)
・その他の血糖降下薬→64.4/10000人年、調整ハザード比1.07(95%信頼区間0.92~1.25)
 
[四肢切断]
・チアゾリジン薬→11.2/10000人年、調整ハザード比0.77(95%信頼区間0.60~1.00)
・DPP-4阻害薬→13.9/10000人年、調整ハザード比0.88(95%信頼区間0.71~1.08)
・メトホルミン→11.3/10000人年、調整ハザード比0.70(95%信頼区間0.64~0.77)
・SU薬→16.3/10000人年、調整ハザード比1.05(95%信頼区間0.95~1.15)
・インスリン→35.0/10000人年、調整ハザード比1.64(95%信頼区間1.41~1.91)
・その他の血糖降下薬→16.1/10000人年、調整ハザード比0.93(95%信頼区間0.69~1.25)
 
[腎不全]
・チアゾリジン薬→9.7/10000人年、調整ハザード比1.05(95%信頼区間0.80~1.38)
・DPP-4阻害薬→9.0/10000人年、調整ハザード比0.99(95%信頼区間0.77~1.27)
・メトホルミン→5.3/10000人年、調整ハザード比0.41(95%信頼区間0.37~0.46)
・SU薬→17.5/10000人年、調整ハザード比1.21(95%信頼区間1.10~1.33)
・インスリン→41.5/10000人年、調整ハザード比1.45(95%信頼区間1.25~1.68)
・その他の血糖降下薬→12.4/10000人年、調整ハザード比0.80(95%信頼区間0.56~1.14)
 
 
※メトホルミン単独との比較(リスク低下が示唆されているものだけ記載)
[失明]
・メトホルミン+SU薬+チアゾリジン薬→調整ハザード比0.67(95%信頼区間0.48~0.94)
 
[高血糖]
・メトホルミン+チアゾリジン薬→調整ハザード比0.60(95%信頼区間0.45~0.80)
・メトホルミン+DPP-4阻害薬→調整ハザード比0.78(95%信頼区間0.62~0.97)
 

感想

個人的に、血糖降下薬と大血管障害について検討されている研究についてはいくつか読んできましたが細血管障害について検討されているものを読むのは今回が初めてかもしれません。
結果としてはメトホルミン単独のみが全てのアウトカムに対してリスクを低下させることが示唆されており、流石はメトホルミンという感じですが絶対差で見ると案外その差は大きくないのかもしれません。
 
チアゾリジン薬では失明のリスク低下が示唆されており、メトホルミンとの併用で高血糖リスクの低下についても示されておりますが、リスクとしては小さいもののつい最近も膀胱癌リスクを増加させるとするコホート研究が発表されており(BMJ 2016; 352 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i1541 )、骨折リスクや何よりも心不全リスク、また大血管障害に対してのベネフィットについては不明確であることを考慮するとリスクを上回るほどのベネフィットではないような印象です。
 
インスリンについてはもうボロボロな結果ですが、交絡因子の調整は割りとしっかりと行われているように感じますが、やはり「HbA1cが高い人ほどインスリンが処方される」等の交絡の可能性もあるのではないかと思います。いずれにしろベネフィットについては不明ではありますが。
 
 
血糖降下薬の併用についてもあまり良い結果ではなく血糖値を下げるほど良い訳ではないという事が改めて示唆されているようにも思いますが、使えない場合でなければやはり第一選択はメトホルミンであり、現在これだけ数多くの血糖降下薬が存在するなかで選択肢が極めて限定されているという状況に改めて気付かされました。