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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

抗うつ薬は心筋梗塞と関連しますか?

抗うつ薬

①「Use of antidepressants and the risk of myocardial infarction in middle-aged and older adults: a matched case-control study.」

PMID: 26546336
 
[PECO]
P : 55歳以上のオランダ人(平均年齢69.4歳(SD8.7)、女性60.9%)
・症例 : 心筋梗塞を発症した患者(744人)
・対照 : 年齢・性別でマッチング(9499人)
E : 抗うつ薬の使用あり
C : 抗うつ薬の使用なし
O : 心筋梗塞の発症
 
[チェック項目]
・研究デザイン : ネステッドケースコントロール研究
・交絡因子の調整は? : BMI・血圧・学歴・HDL及び総コレステロール・糖尿病治療・喫煙歴・心不全の既往・静脈血栓塞栓症の既往・うつ病・降圧薬の使用・β遮断薬の使用・脂質降下薬の使用・抗不安薬の使用・催眠薬の使用・抗精神病薬の使用について調整されている
・暴露の定義は? : 処方記録が用いられており、使用していた時期により「使用している(current)」「以前使用していた(past)」「使用したことがない(never)」と定義されている
・集団の代表性は? : ロッテルダムのオンモールト地区が対象となっているが、一般化出来るかは不明
 
[結果]
・抗うつ薬を使用している(current)→調整オッズ比0.71(95%信頼区間0.51~0.98)
・以前抗うつ薬を使用していた(past)→調整オッズ比1.17(95%信頼区間0.94~1.44)
 
・SSRIを使用している→調整オッズ比0.65(95%信頼区間0.41~1.02)
・以前SSRIを使用していた→調整オッズ比1.42(95%信頼区間1.06~1.49)
 
・三環系抗うつ薬を使用している→調整オッズ比0.80(95%信頼区間0.52~1.24)
・以前三環系抗うつ薬を使用していた→調整オッズ比1.04(95%信頼区間0.79~1.38)
 
[コメント]
抗うつ薬の使用と心筋梗塞のリスク低下との関連が見られており、有意な差はないもののSSRIでよりリスクが低下する傾向にある。SSRIと三環系抗うつ薬については前回のコホート研究と似たような結果になっている。
 
 
 
②「Antidepressant adherence and risk of coronary artery disease hospitalizations in older and younger adults with depression.」
PMID: 24890000
※抄録のみ
 
[PECO]
P : 20~97歳のうつ病患者(50261人)
E・C : 抗うつ薬のアドヒアランスで比較
O : 冠動脈疾患に関連する入院
 
[チェック項目]
研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
 
[結果]
・高齢者(65歳以上)でアドヒアランスが80%以上→ハザード比0.74(95%信頼区間0.60~0.93)
・若年者(65歳未満)でアドヒアランスが80%以上→有意な差は見られない
 
[コメント]
冠動脈疾患のリスクが高い患者では予防する効果がある?
 
 
 
③「Depression treatment after myocardial infarction and long-term risk of subsequent cardiovascular events and mortality: a randomized controlled trial.」
PMID: 23272985
 
[PECO]
P : 心筋梗塞後に抑うつ状態がある患者(331人)
E : ミルタザピン又はプラセボを使用(209人)
※HDRS-scoreの改善が見られなければシタロプラムを追加又は精神科医の裁量で治療を追加
C : 通常ケア(122人)
O : 心血管に関連する入院及び心血管死亡の複合エンドポイント
 
[チェック項目]
・研究デザイン : ランダム化比較試験
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 介入群のミルタザピン・プラセボは二重盲検が行われている
・ITT解析されているか? : されていない
・脱落者 : 10.9%
・サンプルサイズ : 介入群208例・対照群122例(パワー89%)
・患者背景 : ほぼ同等
・平均追跡期間 : 4年(SD2.5)
 
[結果]
・E群 vs C群→ハザード比0.97(95%信頼区間0.67~1.40)P=0.850
 
※総死亡(二次アウトカム)
・E群 vs C群→ハザード比0.74(95%信頼区間0.41~1.33)P=0.310
・治療あり群(プラセボ含む) vs 治療なし群→ハザード比0.5295%症状(0.28~0.97)P=0.041
・治療あり群(プラセボ含まない) vs 治療なし群→ハザード比0.56(95%信頼区間0.29~1.05)P=0.072
 
[コメント]
ミルタザピンによる心血管に関連する効果は見られていない。
二次アウトカムであり、また治療あり・なしがE群・C群入り乱れているため妥当性については疑問が残るが薬物療法・非薬物療法が心筋梗塞後に抑うつ症状がある患者の4年間における死亡リスクを低下させることが示唆されている。
 
 
④「Antidepressant use and risk of incident cardiovascular morbidity and mortality among postmenopausal women in the Women's Health Initiative study.」
PMID: 20008698
 
[PECO]
P : 50~79歳の閉経後の女性(米国、136293人)
E : 抗うつ薬の使用あり
C : 抗うつ薬の使用なし
O : 心筋梗塞又は冠動脈疾患死亡・脳卒中・総死亡
 
[チェック項目]
・研究デザイン : 臨床試験のコホート解析及びコホート研究
・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている
・集団の代表性は? : 比較的健康に対する意識が高い集団である可能性がある
・追跡期間 : 平均5.9年
 
[結果]
〇心筋梗塞及び冠動脈疾患死亡
・SSRI→ハザード比0.95(95%信頼区間0.70~1.29)
・三環系抗うつ薬→ハザード比1.13(95%信頼区間0.77~1.65)
・その他の抗うつ薬→ハザード比1.19(95%信頼区間0.74~1.93)
 
〇脳卒中
・SSRI→ハザード比1.45(95%信頼区間1.08~1.97)
・三環系抗うつ薬→ハザード比1.35(95%信頼区間0.90~2.03)
・その他の抗うつ薬→ハザード比1.80(95%信頼区間1.14~2.85)
 
〇総死亡
・SSRI→ハザード比1.32(95%信頼区間1.10~1.59)
・三環系抗うつ薬→ハザード比1.67(95%信頼区間1.33~2.09)
・その他の抗うつ薬→ハザード比1.36(95%信頼区間0.99~1.86)
 
[感想]
閉経後の女性において心筋梗塞及び冠動脈疾患リスクとの関連は見られないものの、脳卒中と総死亡についてはリスクの有意な増加が見られている。ただし、抗うつ薬によるものかうつ病そのものによる影響なのかは明確にはわからない。
 
 
 
⑤「Antidepressant Medication Use and Its Association With Cardiovascular Disease and All-Cause Mortality in the Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke (REGARDS) Study.」
PMID: 26783360
※抄録のみ
 
[PECO]
P : 29616人
E : 抗うつ薬の使用あり(ブプロピオン・ネファゾドン・トラゾドン)
C : 抗うつ薬の使用なし
O : 冠動脈疾患・脳卒中・心血管疾患死亡・総死亡
 
[チェック項目]
・研究デザイン : REGARDS研究の二次解析
 
[結果]
・冠動脈疾患→ハザード比1.21(95%信頼区間1.04~1.41)
・脳卒中→ハザード比1.28(95%信頼区間1.02~1.60)
・心血管死亡→ハザード比1.29(95%信頼区間1.09~1.53)
・総死亡→ハザード比1.12(95%信頼区間1.01~1.24)
 
[感想]
二次解析である点に注意。尚、ブプロピオン・ネファゾドンは日本未承認。
 
 
 

感想

抗うつ薬は心筋梗塞についてはリスクの低下が見られる研究もありますが、その差はわずかである印象です。
 
④や⑤の研究では抗うつ薬の使用により死亡や脳卒中のリスクが増加することが示唆されていますがうつ病の程度などの交絡の可能性があり、③のランダム化比較試験では抗うつ薬に限らずうつ状態に対する治療を行うことで死亡リスクが減少することが示唆されています。
ただ、このランダム化比較試験はなかなか面白いデザインではあるものの内的妥当性には疑問が残り、二次アウトカムの結果である点からも割り引いて考える必要はありそうです。
 
 
年齢等による違いがある可能性はあるものの、少なくとも抗うつ薬は心筋梗塞のリスクを増加させないという事は言えるのかなと思います。
心血管に関連する死亡との関連についてはまた別途調べてみる必要がありそうですね…
 
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