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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

糖尿病患者は収縮期血圧がどれくらいになったら降圧治療を開始するべきですか?

「Effect of antihypertensive treatment at different blood pressure levels in patients with diabetes mellitus: systematic review and meta-analyses」

BMJ 2016; 352 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i717 (Published 25 February 2016)
Cite this as: BMJ 2016;352:i717
 
 

PECO

P : 49トライアルに参加した糖尿病患者73738人
E・C : 降圧治療を行う際のベースライン時の収縮期血圧で比較
O : 総死亡・心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中・心不全・末期腎不全
 

チェック項目

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析
 
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
 
・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されているため注意
 
・評価者バイアス : 「authors independently checked the abstracts and full text articles for eligibility and resolved any disagreements by discussion」と記載されている。
 
・出版バイアス : Funnel plotを用いて検討されているが「The overall plots for all-cause mortality and myocardial infarction showed potential asymmetry」と記載されている。また、「Also, asymmetry was non-significant using Egger´s and Begg´s tests.」とも記載されている。
 
・元論文バイアス : 全てRCT。Cochrane Collaboration’s risk of bias toolを用いて検討されており、「In our overall meta-analyses we judged the risk of bias as low」と記載されている。
 
・異質性バイアス : ブロボグラムの方向性は比較的一致しているように見える
 
・追跡期間 : 平均3.7年
 

結果

[ベースライン時の収縮期血圧で比較]
①総死亡
・>150mmHg→相対リスク0.89(95%信頼区間0.80~0.99)  異質性:I2=6.2%・P=0.383
・140~150mmHg→相対リスク0.87(95%信頼区間0.78~0.98)  異質性:I2=32.8%・P=0.145
・<140mmHg→相対リスク1.05(95%信頼区間0.95~1.16)  異質性:I2=0%・P=0.948
・全体→相対リスク0.93(95%信頼区間0.87~0.98)  異質性:I2=9.8%・P=0.295
 
②心血管死亡
・>150mmHg→相対リスク0.75(95%信頼区間0.57~0.99)  異質性:I2=48.7%・P=0.035
・140~150mmHg→相対リスク0.87(95%信頼区間0.71~1.05)  異質性:I2=56.5%・P=0.019
・<140mmHg→相対リスク1.15(95%信頼区間1.00~1.32)  異質性:I2=0%・P=0.449
・全体→相対リスク0.91(95%信頼区間0.79~1.04)  異質性:I2=51%・P=0.001
 
③心筋梗塞
・>150mmHg→相対リスク0.74(95%信頼区間0.63~0.87)  異質性:I2=0%・P=0.908
・140~150mmHg→相対リスク0.84(95%心筋梗塞0.76~0.93)  異質性:I2=0%・P=0.788
・<140mmHg→相対リスク1.00(95%信頼区間0.87~1.15)  異質性:0%・P=0.784
・全体→相対リスク0.86(95%信頼区間0.80~0.93)  異質性:0%・P=0.774
 
④脳卒中
・>150mmHg→相対リスク0.77(95%信頼区間0.65~0.91)  異質性:I2=0%・P=0.77
・140~150mmHg→相対リスク0.92(95%信頼区間0.83~1.01)  異質性:I2=11.5%・P=0.339
・<140mmHg→相対リスク0.81(95%信頼区間0.53~1.22)  異質性:I2=57.9%・P=0.02
・全体→相対リスク0.87(95%信頼区間0.76~0.96)  異質性:I2=22%・P=0.134
 
⑤心不全
・>150mmHg→相対リスク0.73(95%信頼区間0.53~1.01)  異質性:I2=45.1%・P=0.09
・140~150mmHg→相対リスク0.80(95%信頼区間0.66~0.97)  異質性:16.0%・P=0.308
・<140mmHg→相対リスク0.90(95%信頼区間0.79~1.02)  異質性:I2=0%・P=0.973
・全体→相対リスク0.85(95%信頼区間0.78~0.93)  異質性:1.5%・P=0.439
 
⑥末期腎不全
・>150mmHg→相対リスク0.82(95%信頼区間0.71~0.94)  異質性:I2=0%・P=0.434
・140~150mmHg→相対リスク0.91(95%信頼区間0.74~1.12)  異質性:I2=0%・P=0.491
・<140mmHg→相対リスク0.97(95%信頼区間0.80~1.17)  異質性:I2=0%・P=0.652
・全体→相対リスク0.88(95%信頼区間0.80~0.97)  異質性:I2=0%・P=0.636
 
 
[降圧治療により達成した収縮期血圧で比較]
①総死亡
・>140mmHg→相対リスク0.96(95%信頼区間0.86~1.06)  異質性:I2=27.3%・P=0.169
・130~140mmHg→相対リスク0.86(95%信頼区間0.79~0.93)  異質性:I2=0%・P=0.771
・<130mmHg→相対リスク1.10(95%信頼区間0.91~1.33)  異質性:0%・P=0.779
・全体→相対リスク0.93(95%信頼区間0.87~0.98)  異質性:I2=9.8%・P=0.295
 
②心血管死亡
・>140mmHg→相対リスク0.87(95%信頼区間0.71~1.07)  異質性:I2=51.8%・P=0.008
・130~140mmHg→相対リスク0.86(95%信頼区間0.72~1.04)  異質性:I2=45.2%・P=0.044
・<130mmHg→相対リスク1.26(95%信頼区間0.89~1.77)  異質性:I2=2.6%・P=0.405
・全体→相対リスク0.91(95%信頼区間0.79~1.04)  異質性:51%・P=0.001
 
③心筋梗塞
・>140mmHg→相対リスク0.82(95%信頼区間0.72~0.92)  異質性:I2=0%・P=0.476
・130~140mmHg→相対リスク0.88(95%信頼区間0.79~0.97)  異質性:I2=0%・P=0.622
・<130mmHg→相対リスク0.94(95%信頼区間0.76~1.15)  異質性:I2=0%・p=0.849
・全体→相対リスク0.86(95%信頼区間0.80~0.93)  異質性:I2=0%・P=0.774
 
④脳卒中
・>140mmHg→相対リスク0.90(95%信頼区間0.76~1.06)  異質性:I2=25.5%・P=0.18
・130~140mmHg→相対リスク0.91(95%信頼区間0.83~1.00)  異質性:I2=0%・P=0.472
・<130mmHg→相対リスク0.65(95%信頼区間042~0.99)  異質性:I2=35.9%・P=0.167
・全体→相対リスク0.87(95%信頼区間0.79~0.96)  異質性:I2=22%・P=0.134
 
⑤心不全
・>140mmHg→相対リスク0.83(95%信頼区間0.68~1.00)  異質性:I2=44.6%・P=0.071
・130~140mmHg→相対リスク0.81(95%信頼区間0.70~0.94)  異質性:I2=0%・P=0.652
・<130mmHg→相対リスク0.93(95%信頼区間0.71~1.21)  異質性:I2=0%・P=0.918
・全体→相対リスク0.85(95%信頼区間0.78~0.93)  異質性:I2=1.5%・P=0.439
 
⑥末期腎不全
・>140mmHg→相対リスク0.88(95%信頼区間0.76~1.03)  異質性:I2=15.9%・P=0.308
・130~140mmHg→相対リスク0.84(95%信頼区間0.66~1.07)  異質性:I2=22%・P=0.268
・<130mmHg→相対リスク1.01(95%信頼区間0.71~1.43)  異質性:I2=0%・P=0.994
・全体→相対リスク0.88(95%信頼区間0.80~0.97)  異質性:I2=0%・P=0.636
 

結果

全てのアウトカムでベースライン時の収縮期血圧が140mmHg未満の場合に降圧治療を行ってもリスクの有意な低下は見られず、治療により収縮期血圧を130mmHg未満に管理してもやはりリスクの有意な低下は見られず死亡についてはわずかながらリスクが増加する傾向にある(>140mmHgの方がむしろリスクが低い)という個人的には少し衝撃的な結果でした。
 
一次アウトカムが複数設定されており、出版バイアスの可能性もあるため妥当性には疑問が残るももの、少し前に読んだメタ解析(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25668264)のサブグループ解析でもベースライン時の収縮期血圧が140mmHg以上の場合に総死亡や心血管イベント等のリスクの低下が見られているため、糖尿病患者に対して降圧治療を行う際は概ね収縮期血圧が140mmHg以上の場合はベネフィットが得られるのかなという印象です。
 
また、少なくとも「the low,the better」とは行かないように思います。