【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

DPP-4阻害薬で心不全が起こりやすくなる?

「Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and risk of heart failure in type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis of randomised and observational studies」

BMJ 2016; 352 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i610 (Published 17 February 2016)
Cite this as: BMJ 2016;352:i610
 

PECO

P : 成人の2型糖尿病患者
E : DPP-4阻害薬の使用
C : プラセボ又は生活習慣の改善又は他の血糖降下薬の使用
O : 心不全の発症又は心不全による入院
 

チェック項目

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか?: 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 複数のレビュワーが独立して評価している
・出版バイアス : 「We planned to assess publication bias but were unable to do so owing to very low event rates.」と記載されている
・元論文バイアス : ランダム化比較試験の他に非ランダム化比較試験・コホート研究・ケースコントロール研究も含まれている。ランダム化比較試験は心不全のアウトカムについて「We rated the quality of evidence as low because of risk of bias and imprecision」と記載されている。
・異質性バイアス : 視覚的にはブロボグラムの方向性は一致していない。
 

結果

[ランダム化比較試験]
①心不全の発症(追跡期間中央値52週) : E群(0.27%) vs C群(0.26%)→オッズ比0.97(95%信頼区間0.61~1.56)I2=0%
 
②心不全による入院(追跡期間中央値の範囲76~156週) : E群(3.4%) vs C群(3.0%)→オッズ比1.13(95%信頼区間1.00~1.26)I2=0%
 
[観察研究]
①心不全の発症
・後ろ向きコホート研究※1研究のみ(追跡期間中央値4年) : DPP-4阻害薬群 vs SU薬群→調整ハザード比1.10(95%信頼区間1.04~1.17)
・ケースコントロール研究※1研究のみ : シタグリプチン群 vs 使用なし群→調整オッズ比0.75(95%信頼区間0.38~1.46)
 
②心不全による入院
・後ろ向きコホート研究※6研究(追跡期間中央値の範囲0.5~2.6年) : E群(0.2%) vs C群(0.3%)→調整オッズ比0.85(95%信頼区間0.74~0.97)I2=31%
 
・ケースコントロール研究※2研究のみ : シタグリプチン群 vs 使用なし群→調整オッズ比1.41(95%信頼区間0.95~2.09)I2=65%
 
 

感想

RCTのみの解析では心不全の発症では有意な差は見られおらず、心不全による入院について有意差が見られているもののウェイトの半分近くを占めるSAVOR試験に結果が引っ張られているような印象のため、少なくともサキサグリプチン以外のDPP-4阻害薬では心不全の発症又は悪化と関連する可能性はかなり低いようにかんじますが、追跡期間が比較的短いように感じるためその点については注意が必要かと思います。
 
 
正直このメタ解析のみでは何とも言えないような感じがありますが、やはりこれまで通り心不全患者にDPP-4阻害薬が処方されている場合等は十分に警戒すべきだと思います。