【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高齢者は転倒による骨折予防のために運動した方が良いですか?

これまで高齢者に対する薬剤による転倒・骨折リスクを検討した論文を幾つか読んできました。

 

 

 

 

 

 

 

 
今回は運動することで転倒を予防することができるのかについて検討されている論文を読んでみたいと思います。
 
「Effect of structured physical activity on prevention of serious fall injuries in adults aged 70-89: randomized clinical trial (LIFE Study)」
PMID: 26842425
 

PECO

P : 座りがちな生活をしており(運動が<20分/週、及び中等度の身体活動が125分/週)、簡易身体能力バッテリーが9点以下で身体活動制限はあるが、15分以内で400mを歩行することが可能な70~89歳の1635人
E : 150分/週の歩行や筋力・柔軟性・バランスに対するトレーニングを施設で週2回及び自宅で週3~4回行う(818人)
C : 健康教育に関するワークショップを行う(817人)
O : 重大な転倒による傷害(椎骨以外の骨折又は転倒による入院)
 

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : 層別ランダム化が行われている
・盲検化されているか? : PROBEが行われている
・ITT解析されているか? : されている
・サンプルサイズ : 各群800人(パワー80%)
・脱落者 : 17%
・追跡期間中央値 : 2.6年
・患者背景 : ほぼ同等
 

結果

E群(9.2%) vs C群(10.3%)→ハザード比0.90(95%信頼区間0.66~1.23)P=0.52
 
※サブグループ解析
・全ての重大な転倒による傷害
①男性→リスク比0.54(95%信頼区間0.31~0.95)
②女性→リスク比1.07(95%信頼区間0.75~1.53)
 
・転倒に関連する骨折
①男性→リスク比0.47(95%信頼区間0.25~0.86)
②女性→リスク比1.12(95%信頼区間0.77~1.64)
 
・転倒に関連する入院
①男性→リスク比0.41(95%信頼区間0.19~0.89)
②女性→リスク比1.10(95%信頼区間0.65~1.88)
 

感想

身体活動プログラムは健康教育プログラムと比較して転倒による傷害の有意な減少が見られていませんが、サブグループ解析では男性のみ転倒による傷害や骨折・入院の有意な減少が見られるもの事前に指定されてはいない解析のようなので注意が必要かもしれません。
 
まあ、男性については転倒による骨折の予防のために運動するというのはアリなのかなと思いました。
ただ、BMIの平均が各群30ちょっとで脱落者も多めのため元々運動する事が嫌いな人達が多いのかなという印象で、痩せ型の人等ではどうなんだろう?という感じなので運動と転倒についてはまた改めて調べてみたいと思います。