【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

心不全になりやすい生活習慣とは?

「Contribution of Major Lifestyle Risk Factors for Incident Heart Failure in Older Adults: The Cardiovascular Health Study.」
PMID: 26160366

PECO

P : 65歳以上の4490人(米国、女性61%・平均年齢72歳)
E・C : 食習慣(AHEI・DASH・AHA2020・心血管疾患の危険因子について考慮された生物学的習慣)・身体活動(運動強度・歩行速度・消費エネルギー・歩行距離)・アルコールの摂取・喫煙・肥満について比較
O : 心不全の発症

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・調整された交絡因子は? : 年齢・性別・人種・登録場所・教育・収入・生活習慣について調整されている
・集団の代表性は? : メディケア受給者からランダムに選択されており、大きな問題はないと思われる
・追跡期間 : 最長21.5年

結果

[食習慣]
全て有意な差は見られていない

[歩行速度]
E群:2mph(約3.22km/h)以上 vs C群:2mph未満→調整ハザード比0.80(95%信頼区間0.71~0.90)

[余暇の活動量]
E群:845kcal/週以上 vs C群:845kcak/日→調整ハザード比0.78(95%信頼区間0.69~0.87)

[喫煙]
E群:喫煙したことがない又は以前喫煙していたが現在は喫煙していない vs C群:現在喫煙している→調整ハザード比0.77(95%信頼区間0.65~0.92)

[飲酒]
E群:週1回以上 vs 週1回未満→調整ハザード比0.77(95%信頼区間0.67~0.88)

[BMI]
E群:30%未満 vs C群:30%以上→調整ハザード比0.70(95%信頼区間0.61~0.80)

[リスク低下因子]
E群:上記のリスク低下因子のうち4つ以上が該当 vs C群:上記のリスク低下因子のうち該当するのが4つ未満→調整ハザード比0.55 (95%信頼区間0.42~0.74)

感想

食習慣では関連が見られないものの、歩行速度が遅い・運動量が少ない・喫煙している・飲酒する・肥満である事が心不全発症リスクを増加させることが示唆されている。
ただ、歩行速度や運動量に関しては交絡の影響も大きい可能性があり、また、高齢になってからこれらの因子を改善することで心不全リスクを低下させられるかはこの研究からは不明である。

比較的若年のうちからこれらの因子に注意して生活する事は心不全の予防に対しては有効かもしれない。





適度に運動して、タバコは吸わず、お酒は控えめにして、太らないように注意するといったところでしょうか。一般的に言われているような健康的な生活習慣ではありますが、なんだか少し息苦しい感じもしますね。
特にお酒なんかは他者とのコミュニケーションの役に立ったりストレス解消の手段だったりして必要な場合もあるのではないかと思いますが、タバコに関しては心不全に限らず心血管疾患や癌のリスクになることはもう明らかであると言えますし、本人だけでなく周囲の人の健康にも害を及ぼす可能性があるため、こういったものが合法的に販売されている現状は憂うべき状況であると個人的には思います。

まあ私はお酒は一切飲まない喫煙者ですが。