【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

NSAIDsの使用で膀胱炎に対する抗菌薬の使用を減らせますか?

「Ibuprofen versus fosfomycin for uncomplicated urinary tract infection in women: randomised controlled trial.」

PMID: 26698878
 

PECO

P : 単純尿路感染症のある18~65歳の女性484人(ドイツ)
E : イブプロフェン400mg×3/日(241人)
C : ホスホマイシン3g×1/日(243人)
O : 0~28日間での抗菌薬の使用回数・0~7日間での症状の負担(排尿障害・頻尿又は尿意切迫感・下腹部痛をスコアで評価)
 

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験(非劣性試験)
・真のアウトカムか? : 症状の負担については真のアウトカムであると考えるが、スコアによる評価である点について注意が必要
・一次アウトカムは明確か? : 明確ではない
・ランダム化が行われているか? : ブロックランダム化が行われている
・盲検化が行われているか? : 二重盲検が行われている
・ITT解析が行われているか? : 行われている
・追跡率 : 92.1%
・サンプルサイズ : 420人(パワー90%)
・患者背景 : 特に気になるような偏りは見られない。平均年齢37.3歳。
 

結果

 
・抗菌薬の使用回数
E群(35%) vs C群(100%)→平均差−64.7%(95%信頼区間−70.7~−58.7)P<0.001
 
・症状の負担(スコアの累積値) ※非劣性マージンは95%信頼区間の上限が125%
E群(17.3) vs C群(12.1)→平均差5.3(95%信頼区間3.5~7.0)P<0.001[140.5%(95%信頼区間125.4%~157.3%)]
 
※二次アウトカム
・入院を必要とする重篤な有害事象
E群(4例) vs C群(0例)→平均差1.7(95%信頼区間0.0~3.3)P=0.06
 
・ランダム化後の症状持続期間
E群(5.6日) vs C群(4.6日)→平均差0.98日(95%信頼区間0.59~1.38)P<0.001
 

感想

抗菌薬の使用は減らせるかもしれないが、症状負担スコアでの評価については非劣性が示されておらず非常に解釈が難しいと言うか微妙な結果です。正直なところ、症状負担スコアの累積値の差がどれほどのものなのかちょっとわかりませんが…
 
 
実際、「辛いので抗菌薬を飲んで早く治したい」という人は多いのではないかと思いますし、ホスホマイシンと比較するとイブプロフェンのみでは症状が約1日長引き、合併症も増える傾向にあるかもしれないという事を考えると膀胱炎の症状がある方に「取り敢えずイブプロフェンで様子を見る」等のアクションには繋がりづらいかなという印象です。