【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

コーヒーを飲むとうつ病になりにくい?

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 
ではコーヒー・カフェイン第三弾を。
今回はコーヒー・カフェインとうつ病の関係を見ていきたいと思います。
 
 
①「Coffee, tea and caffeine intake and the risk of severe depression in middle-aged Finnish men: the Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study.」
PMID: 20359377
 
[PECO]
P : うつ病や精神疾患の診断がない42~60歳の中年男性2682人(フィンランド)
E : コーヒーや紅茶の摂取あり
C : 摂取なし
O : うつ病
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・調整された交絡因子は? : 年齢・歴年・社会経済・喫煙・飲酒・最大酸素摂取量・BMI・葉酸やPUFAの摂取・併存症・レジャー活動・エネルギー摂取
・集団の代表性は? : Kuopio地域のみが対象になっており日本人にもそのまま適応できるかは不明
・追跡期間 : 17.5年
 
[結果]
〇コーヒー
・<375ml/日→相対リスク0.29(95%信頼区間0.08~0.98)
・375~813ml/日→相対リスク0.48(95%信頼区間0.17~1.36)
・813ml/日→相対リスク0.25(95%信頼区間0.07~0.91)
 
〇紅茶
・平均105ml/日摂取→相対リスク1.40(95%信頼区間0.78~2.51)
 
〇カフェイン(<425mg/日と比較して)
・425mg/日~594mg/日→相対リスク1.07(95%信頼区間0.45~2.56)
・595~781mlg/日→相対リスク1.83(95%信頼区間0.82~4.09)
・>781mg/日→相対リスク0.85(95%信頼区間0.34~2.15)
 
コーヒー(ドリップコーヒーで2杯以上)を飲むことでうつ病を予防出来ることが示唆されているが、カフェインのみで見ると関連が見られていない。
ただ、ドリップコーヒー1杯(150ml)に含まれているカフェインは約135mgということなので比較されている量が多めな点に注意が必要かもしれない。カフェインの摂取無しと少量摂取なんかも見てみたいところ。
 
 
 
②「Coffee, caffeine, and risk of depression among women.」
PMID: 21949167
 
[PECO]
P : うつ病の診断のない30~55歳の女性50739人(米国)
E : コーヒーの摂取が2杯/週以上
C : コーヒーの摂取が1杯/週以下
O : うつ病の診断や抗うつ薬の使用
 
[チェック項目]
研究デザイン : コホート研究
・調整された交絡因子は? : 年齢・仕事の間隔・総エネルギー摂取・閉経後の状態・喫煙・BMI・身体活動・結婚歴・教会やボランティアやコミュニティグループへの参加・退職・糖尿病・癌・高血圧・心筋梗塞・狭心症・Mental Health Index score
・対象の代表性は? : 看護師が対象になっておりそのまま一般の日本人には適応できないかもしれない(激務のためうつ病になりやすいとか?)
・追跡期間 : 10年
 
[結果]
〇カフェインありコーヒー
・2~6杯/週→相対リスク1.00(95%信頼区間0.88~1.14)
・1杯/日→相対リスク0.92(95%信頼区間0.83~1.02)
・2~3杯/日→相対リスク0.85(95%信頼区間0.75~0.95)
・≧4杯/日→相対リスク0.80(95%信頼区間0.64~0.99)
 
〇カフェインなしコーヒー
・1~4杯/週→相対リスク1.05(95%信頼区間0.87~1.27)
・5~6杯/日→相対リスク1.04(95%信頼区間0.79~1.38)
・1杯/日→相対リスク1.07(95%信頼区間0.92~1.24)
・≧2杯/日→相対リスク0.80(95%信頼区間0.61~1.05)
 
女性でも1日2杯以上コーヒーを飲むことでうつ病のリスクを低下させる事が示唆されているが、こちらはデカフェでは関連がみられていない。やはりカフェインが関連か?
 
 
 
③「Coffee and caffeine consumption and depression: A meta-analysis of observational studies.」
PMID: 26339067
※抄録のみ
 
[PECO]
P : コーヒーとうつ病について検討した7つの観察研究330677人、カフェインとうつ病について検討した8つの観察研究38223人
E : コーヒー・カフェインの摂取あり
C : コーヒー・カフェインの摂取なし
O : うつ病
 
[チェック項目]
・研究デザイン : 観察研究のメタ解析
 
[結果]
・コーヒー→相対リスク0.757(95%信頼区間0.624~0.917)
・カフェイン→相対リスク0.721(95%信頼区間0.522~0.997)
 
 
 
④「Coffee, tea, caffeine and risk of depression: a systematic review and dose-response meta-analysis of observational studies.」
PMID: 26518745
※抄録のみ
 
[PECO]
P : 23観察研究の346913人
E : コーヒー・紅茶・カフェインの高用量摂取
C : 低用量摂取
O : うつ病
 
[チェック項目]
・研究デザイン : 観察研究のメタ解析
 
[結果]
・コーヒー→相対リスク0.76(95%信頼区間0.64~0.91)
400ml/日で最もリスク低下が大きく、Jカーブを描く。
 
・紅茶→相対リスク0.70(95%信頼区間0.48~1.01)
 
・カフェイン→相対リスク0.84(95%抄録0.75~0.93)
 
 
 
⑤「A prospective study of coffee drinking and suicide in women.」
PMID: 8604958
※抄録のみ
 
[PECO]
P : 冠動脈疾患・脳卒中・癌の既往のない34~59歳の女性86626人(米国)
E : コーヒーやカフェインの摂取あり
C : 摂取なし
O : 自殺
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・調整された交絡因子は? : 年齢・喫煙・飲酒・使用薬・既往歴・結婚歴・ストレスの自己申告
・対象の代表性は? : 看護師が対象
・追跡期間 : 10年
 
[結果]
・コーヒーの摂取が2~3杯/日→相対リスク0.34(95%信頼区間0.17~0.68)
・4杯/日以上→相対リスク0.42(95%信頼区間0.21~0.86)
 
 

感想

1日2杯以上のコーヒーを飲むことでうつ病のリスクを低下させられることが示唆されており、カフェインでもコーヒー2杯以上の量に換算して考えて問題ないように思います。
 
まあやはり全て観察研究なので、コーヒーを飲めるだけの経済的・時間的な余裕がある人ほどうつ病になりにくい等の理由があるのかもしれませんが、1日2回くらいコーヒーを飲んで休憩するような時間が必要ということなのかもしれませんね。