【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

コーヒーを飲むと長生きする?①

年末年始はコーヒー・カフェイン特集を行いたいと思います。

何故コーヒーなのか、特に理由はありませんが今回はコーヒー・カフェインと死亡についての論文を読んでみたいと思います。



①「Association of Coffee Consumption With Total and Cause-Specific Mortality in 3 Large Prospective Cohorts.」
PMID: 26572796

[PECO]
P : (a)30~55歳の女性看護師121700人、(b)25~42歳の女性看護師116671人、(c)40~75歳の歯科医師・薬剤師・獣医師・検眼医・整体医・足病医である男性51529人(米国)
E : コーヒーの摂取あり
C : コーヒーの摂取なし
O : 総死亡

[チェック項目]
・研究デザイン : 3つのコホート研究のデータを解析
・調整された交絡因子は? : 歴年・年齢・既往歴・BMI・身体活動・食事・総エネルギー摂取・喫煙・砂糖入り飲料水の摂取・飲酒・高血圧・高コレステロール血症・糖尿病・閉経後の状態・閉経後のホルモン
・集団の代表性は? : 医療者が対象となっており、一般より健康に対する意識が高い可能性があるため注意が必要かもしれない
・追跡期間 : (a)28年 (b)21年 (c)26年

[結果]
・コーヒーの摂取が平均1日1杯以下→調整ハザード比0.94 (95%信頼区間0.89~0.99)
・1.1~3.0杯→調整ハザード比0.92(95%信頼区間0.87~0.97)
・3.1~5.0杯→調整ハザード比0.85(95%信頼区間0.79~0.92)
・5.1杯以上→調整ハザード比0.88(95%信頼区間0.78~0.99)

こちらの研究ではデカフェ(カフェインなし)のみの解析でも同じような結果になっているところが興味深いです。



②「Association of Coffee Consumption With Overall and Cause-Specific Mortality in a Large US Prospective Cohort Study.」
PMID: 26614599

[PECO]
P : 米国の90317人
E : コーヒーの摂取あり
C : コーヒーの摂取なし
O : 総死亡

こちらは抄録のみしか残念ながら読めませんが、米国でのコホート研究で、喫煙やその他の交絡まる因子について調整されているようです。

[結果]
・コーヒー1杯/日→ハザード比0.94 (95%信頼区間0.87~1.02)
・2~3杯/日→ハザード比0.82(95%信頼区間0.77~0.88)
・4~5杯/日→ハザード比0.79(95%信頼区間0.72~0.86)
・6杯以上/日→ハザード比0.84(95%信頼区間0.75~0.95)

こちらでもカフェイン有り・デカフェで同様の結果になっているようです。



③「The relationship of coffee consumption with mortality.」
PMID: 18559841

[PECO]
P : 心血管イベント又は癌の既往がない男性41736人と女性86214人(米国)
E : コーヒーの摂取あり
C : コーヒーの摂取なし
※カフェインの量をコーヒー137mg/杯、紅茶47mg/杯、ソフトドリンク46mg/缶、チョコレートキャンディ7mg/1オンスとして換算
O : 総死亡

[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・調整された交絡因子は? : 年齢・喫煙・BMI・身体活動・飲酒・親の心筋梗塞の既往歴・閉経後の状態・ホルモン療法・マルチビタミンやVEサプリメントの使用・総カロリー摂取・多価不飽和脂肪酸の摂取・飽和脂肪酸の摂取・n-3脂肪酸の摂取・トランス脂肪酸の摂取・グリセミック負荷・葉酸の摂取
・集団の代表性は? : 医療従事者を対象としたものであるためやはり一般より健康に対する意識が高い可能性がある
・追跡期間 : 男性18年、女性24年

[結果]
〇男性
・コーヒーの摂取が1杯/月~4杯/週→相対リスク1.07(95%信頼区間0.99~1.16)
・5~7杯/週→相対リスク1.02(95%信頼区間0.95~1.11)
・2~3杯/日→相対リスク0.97(95%信頼区間0.89~1.05)
・4~5杯/日→相対リスク0.93(95%信頼区間0.81~1.07)
・6杯以上/日→相対リスク0.80(95%信頼区間0.62~1.04)

〇女性
・1杯/月~4杯→相対リスク0.98(95%信頼区間0.91~1.05)
・5~7杯/週→相対リスク0.93(95%信頼区間0.87~0.98)
・2~3杯/日→相対リスク0.82(95%信頼区間0.77~0.87)
・4~5杯/日→相対リスク0.74(95%信頼区間0.68~0.81)
・6杯以上/日→相対リスク0.83(95%信頼区間0.73~0.95)
※心血管死亡とその他の死亡で有意差あり。癌による死亡では有意差がみられない。

女性で死亡リスクを低下させるが男性では低下させないことが示唆されている。
女性と比べると男性は人数が約半数であり、追跡期間も短い事が影響しているかもしれない。
また、コーヒー以外の飲料もカフェインの含有量に応じてコーヒーに換算している点も注目すべきか?




④「Coffee consumption and total mortality: a meta-analysis of twenty prospective cohort studies.」
PMID: 24279995

[PECO]
P : 20歳以上の973904人
E : コーヒーの高用量摂取
C : コーヒーの低用量摂取
O : 総死亡

[チェック項目]
・研究デザイン : 観察研究のシステマティックレビュー&メタ解析
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「Data were extracted independently by two investigators」
・出版バイアス : 「There was no indication of publication bias in the literature for the analyses of total mortality」の記載あり
・元論文バイアス : 観察研究のメタ解析
・異質性バイアス : ブロボグラムは若干バラバラなように見える
・追跡期間中央値 : 14.1年

[結果]
・全研究→相対リスク0.86(95%信頼区間0.80~0.92)P<0.001  異質性:I2=68.7%、p=0.000

・コーヒーの摂取が5~9杯/日→相対リスク0.85(95%信頼区間0.80~0.92)
・2~4杯/日→相対リスク0.86(95%信頼区間0.73~1.00)
・男性→相対リスク0.81(95%信頼区間0.73~0.90)
・女性→相対リスク0.84(95%信頼区間0.79~0.89)
・>14年→相対リスク0.91(95%信頼区間0.81~1.01)
・≦14年→相対リスク0.82(95%信頼区間0.76~0.89)
・日本人のみを対象とした3研究のみの解析→相対リスク0.82(95%信頼区間0.73~0.92)I2=6.4%

感想

ここまで読んだ限りではコーヒーを飲むことにより死亡リスクを低下させられる事が示唆されており、1日5杯までは用量反応的にリスク低下が見られるがそれ以上では見られないように感じます。
また、男性では死亡リスク低下と関連しない事が示唆されていますがβエラーの可能性もあるのではないかなと思います。

全て観察研究及び観察研究のメタ解析であるため、例えば毎日コーヒーを飲めるだけの経済的又は時間的な余裕がある人の方が長生きしやすい等の因果の逆転も考えられるため結果の解釈には注意が必要ですが、少なくともコーヒーやカフェインを忌避する必要はないかなと思います。妊娠中の女性等では注意が必要ですが、そちらについてはまた後日にしたいと思います。


個人的に興味深かったのはデカフェのコーヒーでも死亡リスク低下との関連が見られていたようですが、カフェインの効果ではなくコーヒーに含まれている他の成分の効果だったりするんでしょうかね?
とりあえずコーヒーでも飲んで一服したい気分なので今回はここまでで失礼致します。